Tida-Tiger

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ローズのジレンマ 感想

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ローズのジレンマ

ローズのジレンマ、東京千穐楽おめでとうございます!!

大分遅くなりましたが、感想をまとめたいと思います。

 

ローズのジレンマ あらすじ

www.tohostage.com

ローズ(大地真央)はかつて著名な作家として名を馳せていたが、5年前に最愛の恋人であり自身も人気作家であったウォルシュ(別所哲也)を亡くして以来、新作を書くことができず、破産の危機に陥っていた。助手のアーリーン(神田沙也加)は、贅沢な生活を顧みずに、負債だけが増えていくローズの経済状況を見かねて、必死にローズに新作を書かせようとするが、ローズは毎晩のように、彼女にしか見えないウォルシュの亡霊と過ごしていた。

ある日ウォルシュは、彼の未完成の小説「メキシカン・スタンドオフ」を若手作家クランシー(村井良大)と組んで仕上げ、印税を稼ぐようローズに提案する。なぜウォルシュがクランシーを推薦したかわからないローズと、売れない作家である自分がなぜ選ばれたかがわからないクランシー。二人の共同作業はうまくいくはずがなかった。

ところが、ローズの預かり知らぬところでクランシーとアーリーンはお互いに惹かれ合っていた。後日、再びローズの家に現れたクランシーは、思わぬ発想でアーリーンを驚かせる。
そして、アーリーンはローズにある告白をする――。

大作家、その助手、その恋人で娯楽作家(故人)(亡霊)、それに呼ばれた作家(1作のみ)の織りなす、濃密な4人芝居です。

ワンシチュエーションもので、海辺にある作家の家の1階と、そこから出られる、海へと続くベランダ?のみ。

演出・見せ方としては割とフラットな感じで、それが各々の純粋な芝居や戯曲のよさをそぎ落とすことなくしっかり見せていて良かったです。

 

東京千穐楽を終えての本編と関係ない所感

大地さんのカーテンコールでの挨拶で泣いた。
ミュージカル「生きる」の東京楽の鹿賀さん挨拶でも泣いたけど!

なんか良くも悪くも、いま生きているこの状況がドラマティックで、なおかつ自分たちもまさに生きて体感しているので、「危機を乗り越えて迎えた千穐楽」っていうカタルシスが一番胸に来るんですよね。こういうと、現実と虚構をーとか、作品そのものを楽しめないなんてーとか思う部分もあるんですけど。

でもやっぱり今って、我慢、してるじゃないですか。

みんな我慢してる。

 

役者さん達は、ちょっとしたおしゃべりや、みんなと食べるご飯、ふらっと外出とかを我慢して我慢して、そうして健康を保った上に、お稽古をして、毎日お芝居をして下さっている。

それをね、見届けられたらね、超嬉しいですよ。
ありがとう、ごめんね、頑張ってくれて嬉しい、今この作品を見れて嬉しいよ、ってなる。

 

しかもそこに、自分自身もなにかしら我慢してきた、っていう、共感しやすい素地があるわけじゃないですか。

少しずつ我慢して…色々思うところもあって…でもそれを乗り越えて、本当に素敵な作品の最後を見届けられたら、ああ報われたなあ、って思う。
我がことのように、嬉しいし、胸がぎゅっとなります。

 

この舞台上と客制の一体感って……良くも悪くも、今だけのものだなあとは思います。

普段も一体感はあるんですけどね。双方に共通した素地があるかないかという点で「今だけ」なのかなと。

 

いろんな理由で、劇場に行かないっていう選択をした人は、当然、劇場でのその感覚を得られないので、どこか報われないような、悔しいような気持ちがあるんですよね。
私も最近は…さすがに……大楽への遠征はやめてるんで…。

 

でもその行かないっていう選択は、決して間違いではないと私は思ってます。
今自分に出来ること、やるべきことを精一杯考えたものだと思う。私自身も、そうして決めたことなので。
だから、今後も恥じたり悔やんだり、他人を羨んだりしないでいられたらいいなあと思います。

 

ともあれ。

東京千穐楽おめでとうございます。
地方にも沢山の愛と笑顔を咲かせてきてください!!

 

本編感想

ローズのジレンマってなんだったんだろう

だろう?

ジレンマ とは

ある問題に対して2つの選択肢が存在し、そのどちらを選んでも何らかの不利益があり、態度を決めかねる状態。葛藤。

ジレンマ - Wikipedia

シンプルに(そしてキャラクター配置から)考えるなら、女として生きるか母として生きるか、なのかなと思います。

死んだ恋人、ウォルシュ。
助手と言われる娘、アーリーン。

でもこのジレンマの表と裏が常に同期しているかというと、そうでもなくて。

ウォルシュと女として生きているときは、生き生きと若々しく見えるけれど、実際は亡霊と妄想でしかなく、常に過去に顔を向けているし、破産や自滅に向かっていて、ほとんど死んでいるも同然である。
ウォルシュから離れてアーリーンと向き合う時には、ボロボロで老いた姿をしているけれど、未来と創造に顔を向けていて、それだけに死も目前であったりする。

生きているのか死んでいるのか、妄想なのか本当なのか、打ち寄せる波の輪郭よりも淡く変化している。本当に…人間らしい。

あとなんだか……ジレンマがあった方が、生きてるって感じがする。

それこそ上で言った、今の状況があるからカタルシスがある、もある意味ちょっとしたジレンマで。本当はあって欲しくないけど。

 でも生きてるって感じするよね。
今、頭の中を真波が駆け抜けていった。

俺、生きてる!!!!!!!!!

 

ウォルシュの本「メキシカン・スタンドオフ」をどうしたかったのか

これ…

クランシーが完成させたら、ウォルシュが死んだことが確定しちゃうから嫌だ
vs
どっちにしろウォルシュはいなくなっちゃうから早く完成させたい

のジレンマなのかなあと思いつつ。

どうなんだろうな…

ただ実は、この本のタイトル自体が、「ローズのジレンマ」というタイトルへのアンサーなんですよね。

メキシカンスタンドオフ

A Mexican standoff is a confrontation in which no strategy exists that allows any party to achieve victory.

Mexican standoff - Wikipedia

明確な勝者がいない膠着状態。

もしかするとチラッと作中でウォルシュが言っていた「タイトルかエンディングを変えた方がいいかもしれない」的なことも、作品タイトルと関わりがあることを暗示してたのかも知れない。

なので多分、答えはないんだろうな~と思ってます。

 

各キャラごと感想

推しが最後でかつ長いのはいつものこと

ローズ(大地真央

可愛い…。

天才らしさ、非凡さがありつつも、どこかさみしさのある等身大の女性・ローズがそこにいました。
あのくるくるド派手な金髪も、すすけた金髪も似合うのすごすぎる。
見た目にも大きく変化があるのに、どちらもひとりのローズという女性の側面であるというのがしっかり感じられて、演技すごいなと思いました。

結構セクシーなセリフやシーンもあるんですけど、快活で可愛い。やらしすぎない。見てて小気味いい。

性格は絶妙に自己中なんだけど嫌いになれないんだよなあ~~!! そういう人だから、って言っちゃう。アーリーンの気持ちわかる。
あなたがそんなことを必要としてるだなんて知らなかった、みたいなセリフの質感が好きすぎて…ああ本当に、この人は……ってなりました。

 

アーリーン(神田沙也加)

可愛い~~~~~!!!

いじらしい…可愛い……キビキビとした助手としての姿や、クランシーとの交流やローズの変化を経て、母親を求める気持ちが表れてきたときの痛々しさがすごくよかった。

ローズを介護してるときの感じとかね…母親がようやく自分のことを見てくれると思ったら、まだウォルシュとの話ばかりしている姿に、感情があふれ出してしまったのがたまんなかったです。

あとクランシーへ警戒心を見せていたところから、ちょっとずつデレてくのが美味しかった。可愛すぎた。ありがとうございます。

 

ウォルシュ(別所哲也

可愛い。ヒロイン枠かも知れない(?)

今作で一番ジレンマがない…? 生きてるか死んでるか、自分の心なのかローズの妄想かみたいなところはあるにしても、どちらにせよローズの幸せは願ってそうでいい奴だなと思いました。

細かい動きが根の明るさを感じさせて、いいキャラだな~と。クランシーににこにこするところが大体好き。

 

クランシー(村井良大

クソデカ感情(クソデカ感情) ってなった。

まぁ~~~~~~~~~~~~~~~~自分語りになるんですけど。
ホント重なるところが多くて、いちいち「う゛」ってなってました。

 

一本出して終わってるところとか…書くこと以外ならまあ出来ますよ(笑)みたいなスレ方とか……お金がなくて(自分に才能がないと思ってて)卑屈なところとか…。

 

ああああああ~~~~(身につまされて死ぬ)
なんかもう特大私信かなと思った(?????????)

わたくしガチ恋のきちがいなので、大体こういうこと言ってますから、聞き流してくださいね。LLLでも同じようなこと言ってました。

戯曲面白いし、いい役者さんとの四人芝居だし、だから選んだお仕事なんだろうけど、本当に……勝手に色々受け取って、自分も腐らず頑張りたいなあと思いました…。

 

ガチ目に同じような状況下にいる人からしても、リアルだな~っと思うお芝居でした。

消えた小説家に大作家様がなんか御用???と警戒しているところとか。卑屈な姿勢が抜けず、どうしても虚勢を張ってしまう感じ、すごいわかる。

あとウォルシュに対して「光栄でした」って言うときの声音が好きです。
あのね~未だにラディアント・ベイビーで柿澤キース君が言ってた「僕の名前はない」が大好きなんですよね。それに並ぶレベルでクランシーの「光栄でした」が好きです。
もしかしたら自分が選ばれたのかも知れない、っていう気持ちがふわっと浮かび上がった所から、スッと暗いところに落下していく感じがあって。
悲しいよね。
思い出すと、自分の胃もキリキリするんだけど、好きなんだよなあ…。

 

物語の中で少しずつ鬱屈が薄まって、本来の優しくて賢いところがみえてくるのが、本当に自然で…これお芝居なんだよなあ。すごいなあ。
アーリーンとの交流で変わったところもあるんだろうけど、書くことが楽しいのかなって思えてニコニコしました。やっぱり彼も根っからの小説家で、書けることが自信というか、自分のアイデンティティを回復出来るんだろうなって。

なんか…自分にはどうせ才能がない、書いたって仕方がない、書きたいものもなかったんだ、って思ってる間は、めちゃめちゃ怠いし何もする気が起きないけど、なんかをきっかけに書き始めると、気持ちも回復するし他のことのやる気も起きるんですよね…これは私の話なんですけど。

そういう感情が想像できる500,000,000,000点のクランシーで、は~~~~~~好き……結婚しよう推し…ってなりました。

序盤は柄シャツに革靴なのに、中盤以降は紺のシャツにコンバースなの好きだよ。

クランシーをやってくれてありがとうね。

 

 

はい。

 

そんな感じで滅茶良い作品でした…!!

地方公演いってらっしゃいませ~~~~!!!みんな楽しめますように!!