Tida-Tiger

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Musical『Devil』 Japanプレビューコンサート 感想

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本公演希望!!!!!!!!!!

ほんっとーに、素敵なミュージカルでした…

 

公演情報

※公式サイトより引用

https://musical-devil.com/

演出:広崎うらん

音楽監督:江草啓太

 

出演

中川晃教小西遼生村井良大/雅原慶

平山素子・佐藤洋介・宮河愛一郎(トリプルキャスト)

/山野靖博・馬場亮成・木村つかさ・町屋美咲

 

演奏 pf江草啓太 dr.臼井かつみ

協力 エイベックス・エンタテインメント

主催 『DEVIL』製作委員会

 

公演期間:2021年9月18日(土)~26日(日)

会場:東京芸術劇場シアターウエスト(全12回公演)

 

 

 

概要・あらすじ

韓国ミュージカルの日本プレビューコンサート版です。

韓国での公演のWikiはこちら。

https://namu.wiki/w/%EB%8D%94%EB%8D%B0%EB%B9%8C

グッズ情報とかキャスティングの話とか、全部のこってていいな…。

韓国の演劇・ミュージカル界の裾野の広さを感じますね。

 

ファウスト』を元にした、X-White(中川晃教)・X-Black(小西遼生)たちと人間の生き様を描く物語。

ウォールストリートで新進気鋭の若手投資家ジョン・ファウスト村井良大)。

愛しのグレッチェン(雅原慶)との愛も深まり、前途洋々…と思われた矢先、ブラックマンデーにより株が大暴落。

責任を感じたジョンは、謎のX-Blackからの誘惑に乗って一時は成功を収めるが、善良なグレッチェンは、成功に酔いしれ恩人を踏みにじるジョンの変化に心を痛め、狂気に陥っていく…。

って感じの話です。

 

2幕・2時間以上のミュージカル作品を、1幕75分のコンサート+α作品に短縮した今作品。

どの曲・どのシーンをはしょるかというのは、役者さんも交えて話し合ったみたいです。

特に魅力ある曲をピックアップしつつ、ジョン・グレッチェンの二軸で物語の中の感情の流れを丁寧に補完していて、一つの作品としてクオリティの高い構成になっていたと思います。



劇場とか美術とか音楽とか

東京芸術劇場シアターウエストでの公演でした。

芸劇めちゃ見やすいですね…?!

上のプレイハウスも大体どこでも見やすいので、推し劇場になりました。最推しはクリエ。

 

二階建てで、上手下手に階段(下手は3~4段上がったところに踊り場がある)があり、動きのある演出がされていました。

投影用の紗幕もかみしもに下げてありましたが、汚しもあり、縁をぎざぎざにしてあったので、舞台美術として馴染んでいました。

 

今回は下手の住人で、なんなら千穐楽はダブルブッキングからのLB席移動だったので、大体端っこから見ていたのですが、視界が遮られず、しっかりと舞台全体を見られました。

X-BlackとX-Whiteが、その超越的な役割故に、上手・下手の二階に立ちがちなのですが、それもしっかり見られたので嬉しかったです。

 

袖の中での生演奏は、ピアノとドラムスのみ。ミサ曲モチーフも多く取り入れられたロック調の音楽なので、最小編成のセレクトとしては最高だったのでは…?!と思いました。

実は、カテコで演奏されていた方が出てきたところで、二人だけだったことに気付きました。

本家はギターかベースとヴァイオリンとその他諸々いるっぽい

https://youtu.be/_dUQp_7P3f4

ギター入ると余計PERSONA3,4っぽくなるな…。

歌いこなしの難易度や編曲のノリが、割とアニゲーオタクと親和性高い感じがするので、本公演が叶った際は、その辺のオタクを釣りあげたいと思います(?)



キャスト感想

推しは番手無視して一番最後に感想言う!

あと今回はダンサーさん達もチラッと触れます。

アンサンブルさん達も最高に素敵でしたが、各々のお名前を把握せずに見ていたので…申し訳ない…!

 

ダンサーさん達

平山素子・佐藤洋介・宮河愛一郎(トリプルキャスト)

主にジョン(グレッチェン)に寄り添う、ガーディアン・エンジェルのような立ち位置だったように思います。

コンテンポラリーっていうのかな? ある程度のタイミングは決めつつ、その時々で振りが変わっていました。

平山さん(唯一の女性)は光を感じさせました。教会のシーンでの登場時は、目深にフードをかぶりうなだれた様子が、聖母像にも見えて良かったです。献身、善、愛のイメージ。

佐藤さんは…お胸…いえ何でもありません闇を感じました。立ち姿が綺麗で躍動感のある動きがかっこいい。あと筋肉が大変美しい。エロスと欲望、退廃のイメージ。

宮河さんは人間性と獣性を感じました。25日の昼は眼鏡をかけていたのが、一番人間っぽかった…。教会のシーンでは段々と獣へと堕ちていく感じがあって良かったです。ジョンが死ぬ時、一緒に倒れるのが好き。でも死のシーン×両足を上に伸ばす、はスケキヨイメージなんよ。

 

中川晃教(X-White)

歌…うまっっっっっっっっっっっっっっっっ………………!!!!!

喉にミキサー飼ってんのかい!!

高いのから低いのからやたら早いのからジャジーなのまで、全部歌いこなすので、毎度ビビります。

X-Whiteは光、善良の化身で(個人的に『神』という解釈は、このコンサート版ではしっくりこない)、あっきー自身の明るさやまっすぐさ、歌の説得力がバチバチにハマっていて素晴らしかったです。

ジョンの選択やグレッチェンの愛を憂える様子も、すごい…高次の存在だ……って感じがして好きです。

千穐楽のカテコで、(番手としては一番上なのに)最後の最後の挨拶を村井氏にぶん投げたのが可愛かったです。

「これで終わりでいいの?」
「いいんじゃないですか?」
「締めの挨拶して」
「僕が?」

みたいな会話をするあき村に、うむうむしているこにたん。

さらにたたみかけるあっきー。
「『本日は』で始まるやつ。おっきなこえで」
オーダーを受けてスーパーの店長か?みたいな挨拶をした推しは
「これでよかったのぉ?!」
と困惑しながらハケていきました。

かわいいじごく。

 

小西遼生(X-Black)

ど…エロス。

韓国作品でよく見るロングロング足首丈コートがあう~腰が細い~肩幅美しい……そして顔と歌声よ…。

低めのお声は当然美しく、ジョンと歌う時には上のパートをやっていましたが、そこも美しく響いていて、これは…アリだな!となりました。(ただ公演終盤はちょっとしんどそうだった)

X-Whiteは闇、欲望の化身で(こっちも『悪魔』とは言いたくないんだな)、ご本人がセクシーな中にも品があるので、誘惑する役割が美しくハマっていて良かった…。

ハミングしているときの、ちょっと斜め上に顔を向けて、目を伏せ、さらした喉を震わせているのが、どどど弩弓に美しくて大好きでした。

あと、二階中央に立つX-Blackの背中にジョンが手を伸ばす様子も、照明の美しさも相まって最高でした。



雅原慶(グレッチェン)

おねーーさまーーーーーーー!!!!

好き…包容力……女神…狂気……そしてお歌パワー。

レッチェンは女性、救い、信仰、清廉(狂気)のモチーフが強く、人間でありつつも清らな様子が、雅原さんのお姿と歌声にとてもよくあっていました。

ジョンにお姉ちゃんがいるっぽいのもあり、姉さん女房の印象。夢見がちで頑張り屋な(だった)ジョンを、慈しみ支える様子が素敵でした。ただ本当に善良であるが故に、ジョンを苦しめてしまったのは事実かなと。

作中で歌われる愛する人。君はトゲを持つ 可憐な 百合の花」というのを、グレッチェンだと解釈しているのですが(百合の花は、聖母のモチーフなので)、その清らかさと悪心への攻撃性がすごいしっくりきていました。ただ個人的に宗教に対して懐疑的なのもあり、最終的な印象は狂信者属性でした。

死ぬ前の歌、毎回脳の血管ちぎれてそう。hihiCとかhihiD#あたり?かな?あんな高音をよく…よくぞ……感情を込めて歌われて…すごすぎる。ボカロで仮歌作った??って思いながら聞いてました。

私の神殿…と愛を語るときに、グレッチェンが「子どもを慈しむ」みたいなことを言ってるのに、ジョンは「二人の子どもになったみたい」と歌ってるのが、キャラの個性が出てて好きでした。

 

村井良大(ジョン・ファウスト

ああっ…好き……………………。

すごい…すごいいいですね。人間をしっかり演じていて、物語の支柱になっているように感じました。

ジョン・ファウストは男性、欲望、人間性の化身という印象で、村井さんのリアルだけど確かに観客席に届く演技にとてもしっくりきていました。

喉も本当に強くてね~。X-Blackと歌う所では下のパートを担当していましたが、それもしっかり響いていましたし、高くあがるところもよかった。
ガーディアン・エンジェルに希うところでの「どうか」のAのロングトーンが綺麗で、最後の一回だけ喉を震わせて濁らせるのも、凋落を感じさせて良かったです。
Sanctus Dominus Kyrie Eleisonと繰り返すところの響きもすごい良かった~。声が通っていて、喉の強さも感じさせ、見事に劇場へと響き渡っていました。

ダンスやポーズでキメるところもよかったな~。その瞬間の、ポーズがバチッとハマった感じがたまらなくカッコよかったです。
キリエ~のところでリズムに合わせてかっこいい立ちポーズをするのが好きでした。
まぶたを伏せて斜め下を冷たく見下ろす…っていうポーズはどこだったかな。それも滅茶最高でしたね。まなざしが良い…。

『行こうか。ワルプルギスへ』とX-Blackに誘われた後の堕ちていく様にも興奮しました。
はじめは抵抗を見せているんですが、上手側から下手側へと移動していくにつれて段々と変わっていき、下手でのダンス中にぐいっとのけぞった時には、一瞬死んだようなまなざしになっていて、ひえっとしました。
あのダンスの名前はよくわからないのですが、所々女性の振りつけをしていたのかな? そういうなまめかしさも良かったです。

キリエ~の所近辺は、成功の快楽に興奮した様子。
その後、グレッチェンに反発しつつも、彼女に言われて銀行買収を撤回しようとする良心も残っていたのですが、X-Blackに囁かれ、完全に闇に飲まれた後は、とても冷徹な表情で、短い時間の中で、人間の欲望とその変化を自然に描いているのが、歌の力であり、村井さん自身の芝居のうまさだな~と感服しました。

照明が綺麗でね~村井氏は比較的肌の色が白い方で、かつ、顔立ちのメリハリがあるので、陰影とライトの照り返しが本当に綺麗に入るんですよね…。狂乱の赤も、静かな青も、演出が見事に生きるので好きです。

 

今回のキャスティングは、役とキャストの相性が最高に良くて、見応え抜群でした…。

マジでマジでマジで、このメンバーで本公演をやっていただきたいです!!



解釈の話

ここから下は、完全に個人の考えなので、なんか…見なくてイイです。見なくて。

 

X-White=神/X-Black=悪魔、ではない

ではない。

と思ってる。

概念的な、超越者としての存在という意味で「神」「悪魔」というのは決して間違いではないんですけど、そこに宗教的なものを持ち込むと、作品世界から乖離しちゃうのかなと思っています。

というのも、宗教における神・悪魔っていうのは、あくまでもその宗教の中で必要とされて作られた装置や機能であって、自然的なものそのままではないんですよね。

大本はね、ものすごいぱわーという概念ではあるんですけど。

その性格であったり、ルールであったりは、宗教が成立する中で必要とされた設定であって、自然ものすごぱわーとは別軸のものなんですよ。

「落雷」は自然のものすごぱわーだけど、「天罰として悪い奴に雷が落ちる」は「雷が落ちた人は悪い奴」って思いたかったり、「雷の力はうちが掌握してる!」って言いたい人がつけた設定でしょ、という話。
「自殺者は天国行けない」っていうのも、アメリカ南部の農場主が、自分の奴隷に教え込むとき、「奴隷は俺の財産なんだから、勝手に減るんじゃねー」って意味がつくわけで。

宗教と倫理と概念は切り分けていかないとごっちゃになりがちなんですよね。

だから、私は白黒を神・悪魔とは認識してないし、そういう言い方はしないです。

 

X=Johnという解釈

これは、このコンサート版が、極度に抽象化された光と闇、男と女の話になってるから、感じ取ったものなんですけど。

この作品は『ファウスト』が下敷きになっていて、元々白黒は一人のキャストが演じていたんだそうです。

レッチェンはそのまま『ファウスト』のヒロインであるGretchen(ドイツ語読みでグレートヒェン)から来てます。

ジョンは、『ファウスト』の元になったJohann Georg FaustさんのJohann(ヨハン→ジョン)が元なのかな。
個人的には、それだけでなく、John Doeなどの示すJohn=「ありふれた男」のモチーフが織り込まれているように感じられます。

誰でもあるものといえば…そうです、Xです。等号の左側、仮定される実存。

X=Johnとすると、ただ単純な光と闇の存在が対立する物語ではなく、人間性とは何かというものに迫ることの出来る物語として捉えられるんじゃないかなと。

X達を明確に擬人化して、人格を与える解釈(神と悪魔が人間をとりあう的な)もアリです。それはそれでエモいし、推しが有能イケメンに取り合われるの好き。(強欲腐女子

ただ、ジョンを人間そのものとして、X達をその心や取り巻く世界全てと考えてみるのも、面白いかなと思ってます。

 

Devilとは誰か

ジョンじゃね?

作中で明確に『悪魔』って言われてるのはジョンだけなので。

(その直前に「あなたは悪魔に操られてる」というセリフがあるので、それをX-Blackと指して言っていると考えるのもあり)

あと、タイトルに定冠詞がついてないのがずっと気になっていて…意図してそうしたのであれば、多分このDevilは固有名詞的な扱いなんですよね。多分。一般的な『悪魔』の話ではなさそう?

なので、作中での固有の存在を指すのかなーと思ってます。

 

『時よ止まれ、お前は美しい』―もっともうつくしいもの―

ファウスト』の名台詞ですね。本編読んだことないけど。
ググったら思ったより残念なタイミングで言ってましたね。

この作中では、もっとも美しいものが闇との契約に使われています。
ジョンはグレッチェンが美しいモノだと考えています。

でも、個人的に、真実もっとも美しいものは『ジョンの心』なんじゃないかと思ってます。
で、ジョンとグレッチェンは対の存在なので、グレッチェンの心もまた美しいものなのです。

まあこれは結構個人的な解釈なんで、根拠が薄いんですけど。(大体どれもそう)

闇が本当に手に入れたかったのは、ジョンとその心なんじゃないかなと思ってます。

レッチェンの言葉に苦しんで迷うならヨシ、迷わなくてもまっすぐ自分の元に堕ちてくればヨシ、グレッチェンが死んだならそれを取り戻させるために死なせればヨシ、確実で無駄がない。
『色あせさせなければ…』というのも、欲望に狂うことなく、善良でいられるならば、それは闇には必要ない、という意味だったのかなと。

ファウストメフィストフェレスとの契約で『時よ止まれ…』と言うほど、人生に満足したら、悪魔に魂を奪われることになっていました。
この作品では、ジョンは、奪われた美しいもの=自殺したグレッチェンを救うために『自分の時を止め』ろとX-Blackに指示されます。

ジョンの自殺の時、もっとも美しかったのは…?というところで次の話に移ります

 

ジョンは何故許されたのか

まあ……あっきーの歌がうまいから…特に文句ないんですけど…。

最後急に光が出張ってきて、ジョンを許して光の中へ…と誘うのは、何個か解釈できるなと思ってます。

 

01.自己犠牲を行ったから

ジョンは色々悪いことを行いましたが、最後にはグレッチェンを救うために、自分の命を投げ出します。
それはとても美しく、清らな行い、魂です。

ファウスト』では清らかなグレッチェンの懇願により、ファウストは救われます。
ですがジョンは、自らの行いによって救済されるのです。

この時、ジョンの心はもっとも美しい状態に戻っています。

X-Blackとの契約にあげられていた「最も美しいもの」をジョンの心と仮定するなら、一度欲望によって闇に染まり、色あせた心が、自己犠牲によってまた色彩を取り戻している為、契約は白紙となり、闇は手を引かざるを得なくなります。

その為、光が彼の魂を迎えに来たのでしょう。

 

02.死んだから

とりあえず、光源が自分の存在にかかわらずある空間だとして。
自分の身の周りに闇を作るのは、自分の肉体、心自体なんですよね。光を遮るので。

でも死んだら肉体はなくなる。心も解き放たれる。

そこに残るのは光しかない。

だから光が彼を迎えた…。

っていう解釈が、個人的な死生観には近いです。

 

長々と書きましたが、とにかく

歌ヨシ! キャストヨシ! 話ヨシ!(考察楽しい!) 衣装も演出も最高!!

で、幸せすぎる公演でした。

本当に~プレビューコンサートだけと言わず、本公演をこのキャストでお願いします~!!