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99才まで生きたあかんぼう 初日感想

99才初日おめでとうございます~!!

ひさびさの辻さん演出×村井氏出演作品! っていうか醒め夢舞台を見てない(辻さん原作舞台のその後のふたりも見てない)ので、実は初です。

海峡の光は見ていたし、原作本も一応流し読みしていたので、どんな作品になるかつかめている……と思いきや全然つかめていなかったので、すごい楽しみでした。

色々と感想等まとめて見ようかと思います。

 

物販

とりあえず、公式サイトに値段などがないのでメモ程度に。

大手町よみうりホールの物販は、チケットもぎり…の手前、エスカレーターを登りきってすぐ左に曲がった先の、クロークやカフェなどのある小スペース内で行っています。珍しく入場前の場所です。チケットもぎった後も出れば良いのですが、意外と道幅が狭いので、流れで行った方が楽かもしれません。動線が割と謎。

グッズは以下の通り。

パンフレット:1500円

Tシャツ:2500円

ポスター:? ゴメン見てなかった。メインビジュアルデザイン。

写真(2Lサイズ):500円 全10種(松田賢二さんは5種?) メインビジュアル+劇中扮装のスチール

販売は6カ所くらいで受け付けてくれています。写真は欲しいものをチェックするシートがあるようなので、先にもらっておいた方がいいです。多分、物販の端とか、写真の見本があるところ付近に置いてあるかと。

物販コーナーの更に奥に、特典引き換え所があります。1列で並んでいました。

 

原作

99才まで生きたあかんぼう (集英社文庫 つ 11-15)

99才まで生きたあかんぼう (集英社文庫 つ 11-15)

 

文庫版は2008年、単行本版が2003年発売かな。

見開き2ページで1才ずつのエピソードを書いています。神さま視点。 

普通に読んで、これをどう舞台化するんだ…?!となりました。

 

 

このあたりからゆるゆるネタバレはいります。 

舞台美術

一番目立つのは、中央上部の赤LED表示板。その時々のあかんぼう(主人公)の年齢を表示してくれます。便利。わかりやすい。

木のぬくもりのある美術。多分つみきモチーフです。

木遊舎 ひのきあかちゃんつみき

木遊舎 ひのきあかちゃんつみき

 

こういう。白っぽいので、投影用の紗幕がわりにもなっていました。

舞台上と上の段という二段構成で、高さのある見せ方もしていました。出捌けする部分の壁にゴングが据え付けてあります。下の上手&下手に金のゴング、上の中央左右の扉の脇に銀のゴングがありました。年代が変わる時などにゴングを鳴らしてキャストがはけていきます。ゴングの鳴らし具合で状況のニュアンスを出していたり。

 

全体感想

1人の人間の人生の、ゆりかごから墓場(直前)までをしっかり描ききった物語。

主人公・あかんぼう役の村井さんは29歳にして0~99歳のさまざまな年齢層を丁寧に演じわけ、他のキャストは八面六臂の大活躍をリアルにこなして素晴らしかったです。

上演予定時間が発表された際に、99歳までの一生を2時間弱、つまり1歳につき1分ちょい…という計算が一瞬脳内をよぎりましたが、完全に1歳ずつ場面転換する訳ではなく、ほどほどに端折る部分は端折って、大切なシーン、心情や状況が大きく動く年齢をきちんとクローズアップしていました。

ギャグ関係が男性的な価値観に根付いているというか…なんて言うか、クレヨンしんちゃんが苦手な人は、ちょっと苦手かも知れないなというのはありました。かく言う私が苦手なんですが。幼児性の表現となると、まあこうなるのかなという。あと性的魅力の誇張とか。でもそればかりではないので、そういう味わいかなという感じ。

100年分の濃縮ジュースなので、飽きるタイミングがないです。必要な間はとってあるけど、それ以外はさくさくさく~っと話が進む。

あと神さま視点がいい感じ。全キャストが演じる神さまが、結構茶々を入れてくる。「順風満帆な人生だが…?!」と前振りしていくので、次はどうなるんだろうとワクワクできます。

ただ逆に言うと、神さま部分とか、各キャストのちょっと地が出る所とかが、大変メタな感じなので、ガッツリ作品世界に入り込みたい派はさめるかもしれない。ウィッグもぐネタも個人的な許容範囲は一作品で一回位までかな…と思いました。

個人的に。投影される映像が地味に面白いというか…十字架がぐるぐる回るのと、花びらや雪の落ちる速度が滅茶苦茶速いのがジワジワ面白くなってきてしまい、ちょっと落ち着かなかったです。もっとシンプルに、3Dとかじゃなくてクレヨンか水彩風の絵にした方が、美術(つみき風)と噛み合って良かったのではという素人考え。あとマジックテープの音は案外聞こえてきますバリバリ。あと、オムレツの商品名が「ママズ・スマイル」に決まったシーンがあるのですが、それ以降は基本的に「ママズ・オムレツ」と呼ばれていて…スマイルの意味の重さも良いけど、オムレツの方が通りが良いし…と一人で悶々としていました。

それはそれとしてキャストの奮闘も素晴らしく、人の一生涯を見事に構成しきった物語は、とても示唆に富んでいて、見ていて満足感がありました。また次に見に行くのが楽しみです!

 

キャストごとの感想

相変わらず推しの感想は一番下にしています。長くなるからね…!!!

ちなみに神さま役は全員が演じています。

村井さんも、主人公が生まれたての時期は上手側で神さまをやっていました。黒ローブに黒サングラスと、普通に怪しいお兄さん達がわちゃわちゃ喋ってるの、面白いです。

松田 凌(主な役:妻、わんちゃん)

妻が素晴らしすぎて…!!

ただ仕草がたおやかというわけではなく、主人公に寄り添い、時に怒り、しかし許し、共に歳を経ていくさまが本当に美しく、人としてかくありたいと思わせるほどでした。

途中で性別を忘れました。

若い頃の瑞々しさや、支える側としての強さも良いけど、年をとって病に倒れるあたりの弱々しさ、老化した様子が本当によくて。

わんちゃんも可愛かったなあ。虐待を受けるシーンは、私の心が死にかけるので厳しかったです。まだダメなんだなあ…そういうの…。


玉城裕規(主な役:母)

ママー!!!!美人だよママ!!!!

浮気をした夫と離婚して、主人公を一人で育てた苦労人。美味しいオムレツの生みの親。ちょいちょいたまちゃん本体が見えるのが、逆にママ自体の優しさ、強さを感じさせていい感じでした。息子妻のブロンド美人も強いけど可愛くてよかった。暴力介護士はちゃんと怖かったので、役者スゲェ……というすごい素直な気持ちになりました。演じわけすごい。


馬場良馬(主な役:父・娘)

娘可愛かったな…可愛かった。デカかった。

愛嬌があって魅力的な娘をしっかりと演じていました。ウェディングドレス姿がシュッとしてて綺麗。他にも滅茶苦茶色んな役やってるんですけど、やりすぎててどれがどれだったかわからない…神さま役が比較的多めなのか目立つ台詞が多いのか、何となく印象が強いです。

主人公のお父さん役もやっていた。ちゃんとクズでした。


松島庄汰(主な役:息子)

息子がちゃんと親の血を引くクズで…というか浮気するのは遺伝子のせいなの??となりました。

非行から更生したかと思えば、浮気したり、なんかこう一筋縄ではいかない人生を、主人公と共に現しているような感じで。この浮き沈みのある人生を、主人公とは異なり、他の兼ね役もこなしながら演じるっていうのは大変だろうなあと思いました。

初恋の女の子と初体験のセクシーちゃんは可愛かった。


松田賢二(主な役:浮気相手・娘婿)

キャラが濃い。セクシーな浮気相手も、娘婿も、結構キャラが濃い。

娘婿はノリが良いけど、意外と頑固で一途な部分もあり、主人公を支えてくれる良き人でした。それだけに、終盤の展開が切ない。でもキャラが濃いどころか遺伝子が濃いめで、すごい子孫におもかげが残されている(まあ同一人物が演じているんだけど)ので、家族の絆と血の濃さを感じました。

 

村井良大(神さま・あかんぼう)

この舞台…推しの芝居の幅を実感できるところが一番ありがたいし嬉しいなと思いました。

この記事に書いてあることに、ひたすらうなずくことしか出来ない。あと写真のセレクトが本当に良い。

生まれたて辺りは神さま役を演じているのであれなのですが。トイレトレーニング中の様子とかの、子どもらしい抑制の効かない声の出し方が本当に可愛くて可愛くて。あと両親が離婚直前の喧嘩をしている時に、舞台奥で耳を塞いで怯えている様子があまりにも悲しかった。

10代の繊細さも可愛かった。根本的にこう…いわゆるダンスィが育った感じで、決して聡明ではないし、上手いこと割り切ることも出来ない不器用さがあるんですが、そこが庇護欲(?)をそそられるというか。20代の頑張ってる感じもよかった。

脂ののりきった30~40代あたりの、ちょっと成功して自信を持ち、傲慢さの出てきた感じとかも好きでした。浮気をする辺りとかも。割と初体験の人&浮気相手って、性的魅力があります~って感じの描き方(衣装とか芝居も)で、主人公の惹かれ方もそうなので、恋をする・人生を共にする妻とは別の枠にあったんですけど、男性にとってその辺はそういうもんなのかな?と何となく別の人間の視界を覗いたような気分になりました。

 

ちょっと横道というかに話がずれて。

この作品ってなんというか「名言」的なのが複数出てくるんですよね。「お尻が拭けたら一人前」とか、人生の8つのモットーとか。「名言」的な台詞の多さでいうと、すうねるところを思い出します。

「名言」の強さと硬さについて感じて、考え始めたのも、あの作品がきっかけだったし。

いわゆる「名言」って、その言葉の中だけで意味が完結すると感じていて。名言集っていう形で、前後の文脈を無視してまとめておいても成り立っちゃうじゃないですか。ある意味、呪文に近いかな。それを唱えれば、唱えた人も聞いた人もある程度の感情を引き出される。

でもそれだけに、言葉を発する本人の感情を込めるのが案外難しい。やっぱり借り物じみてしまう部分があったり、意味にとらわれて上滑りしてしまう時もある。噛み砕いて自分のモノにするのが難しい印象がある。

だけど村井さんの演じる主人公が口にする「名言」は、それぞれが違う実感が込められていて。

名言の強さに振り回されずに、その時々の年齢での、その言葉への感じ方、思い入れの持ち方、人への伝え方をしていた。目下に伝える時は、成功者としての自負の表れの強さがありつつも、傲慢さがちょっと滲んでいたり、自分らしさを取り戻すきっかけになった時には、丁寧に一つ一つの形を確かめていたり。それがすごい印象的でした。

 

そういう台詞回し、心情的な部分もその年齢の様子がしっかり出ていたんですけど、立ち方とかもかなりリアルで。

60代になった時とか、すごいドキッとしました。髪の色合いとか衣装のセレクトもよかったんですけど。純粋に芝居がよくて。

立ち仕事が多くて、腰を庇うように前に少し傾いた立ち方。筋力が落ちてきて、足が高く上がらない様子。目を一方にやる時の速度。

本当に歳を取った人の立ち方、動き方をしていた。

謎の決意。

60歳まで~っていう区切りは、その60歳の様子がよかったのでその辺りまでは見たい&私も60歳になるのでそれ以降の生死がわからないからです。

こちらのリプにくっつけて呟いてたのが以下の内容。

もちろんあれは推しそのものではないし、実際に老けたら全然違くなると思うんだけど、なんかあの中、あの舞台で積み重ねて行ったキャラクターの年齢の厚さがあったからこそ、それを演じた推しそのものの未来も見たくなったの。


推しそのものではないけど、生き様を演じるうえで人生を投影する部分があって。過去の経験だけでなく未来の可能性もキャラの99才の加齢の中にあって。

その二重写しの交錯の先に推し自身の未来への期待が湧いて来た感じなんですよ。あと過去への慈しみ。

という。

・細やかに一人の男の年齢を演じわける芸の深さを噛みしめた

・60歳のビジュアルがよかった

・出来るだけ追いかけたいという自分の願望

が思い切りぶつかり合ってスパークした結果の決意でしたね…。

村井さん本人ではないけど、村井さん本人の中で練り上げられ創り出された幼児~老人の像がそこに現れていることで、村井さん自身の過去・現在・未来を垣間見ることができ、より本人に惹かれました。ということです。

あとねーまたガチ恋芸突然ぶち込んで申し訳ないんですけど。松田くんの妻が大変人として尊敬できる感じだったので、こういう奥さんになりたい…(真顔)っていう感じにもなりました。

終盤の奥さんとの再会もすごい切なくて…でも幸せでたまらなかったです。それは村井さんの主人公の年齢の積み重ねがリアルなのと、松田くん演じる妻の強さと優しさがあったからこそだなと思いました。

 

あと、村井さんの人生は構成作家がついてるみたいと度々(書いた記事消したかもしれんけどわかんないや)言っているのですが、今回もとても…そんな感じで…。

劇中に「一人生まれたら、一人死ぬ。それが人生だ」みたいな台詞があったり。

あと主人公の人生の8つの教訓の8つ目が「スマイル」なんですけど。実際主人公は笑顔で色んな場面を乗り越えていくし、泣きながら生まれてくることへの対比として、そのものが重要なファクターになっている。

ご本人が、だいぶ昔の撮影時に「笑顔が気持ち悪い」的な事を言われて、私が追いかけ始めた頃なんかも口にする程度にはずっと気にされていたのですが……この作品の中で、作品を構成する重要な要素として実際に成り立つくらいに、本当に魅力的な笑顔を見せてくださっていて。

そうだよ~!!あなたの笑顔は本当にいいよ~魅力的だよ~!!!!って滅茶苦茶感動しました。いやほんと……いい笑顔だった。大好きです。

 

そんな感じで。

ホント、出演者の皆さんの目まぐるしいほどの演じわけが最高な作品でした。

また26日に見に行く予定なので、楽しみです!