Tida-Tiger

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真田十勇士(2016) 初日感想

というわけで、待ちに待って待ちまくった真田十勇士の再演が、9/11から幕を開けました!!!

sanadajuyushi.jp

初演が大好きで、楽しくて、立ち見席を買って見たくらいだったので、今回の再演、そして映画化、小説化、しかも超級広報戦略に、とても心が弾んでおります。大好きな作品が、たくさんの人に届けるために、丁寧に展開されていくというのは、とても嬉しいことですね…自分でも想定していなかったところとのコラボも多く、発表になるたび驚かされます。

でもそれも、作品の力があってこそ…作品自体も、その期待、展開に応えているのがまた胸を熱くします。

超弩級エンターテイメントスペクタクル時代劇。とりあえず初日の感想、行ってみます。

ネタバレ…ネタバレは……どこまでが ネタバレなのか わからない。初演があるし…史実ベースだから……終盤の展開もほぼわかっているだろうし…。でもきっと新しく見に来る方も多いだろうから……ほどほどに書きます。

とりあえず、雑な感想、舞台の美術とかについて、冒頭あたりの小ネタなどについてに触れた後、メインキャストの様子に触れていきます。キャストのあたりは、「初演とは違う部分」も書きますので、そこからNGでしたらタブを閉じてください。その後、完全にネタバレですよ!っていうていで、とりとめなくメモを書いていきます。

 

雑な感想

めっちゃ面白かった…いや、期待値も高かったのですが、それを遙かに超える面白さ。村井氏がビジュアルボーイズの日記で180点と言っていたのですが、マジそれ……わかる……となりました。

映画版だとあおりが「真田幸村は……実は腰抜けだった?!」って感じなのですが、十勇士全員にもそれぞれに個性が付与されていて、軍記物ベースでありながら、現代的なキャラ物としての軽妙さも際立ち、新・講談としての魅力を光らせていました。講談って、その時のカッコイイ!!を集めた部分があると思うんですよ。忍者やべえ!とか、槍使いパネエ!入道スゲー!とかで増えていく。真田十勇士なんてそういう中で成立した物語な訳で。それを、現代のカッコイイ!!を集めて、新たに創り上げている。ワクワク、ハラハラさせながら、生き様を魅せてくれるんだから、そりゃ面白いです。

個人的に小ネタが多すぎるかなあとは思いました。笑いすぎて疲れるのと(笑)、ちょっと展開が緩むのが気になる感じ。1幕は特に、初演から微妙に展開を変えて、詰めた分もあるのですが、その余りが全部笑いに使い果たされている印象です。ただ二幕で、シリアスに切り替える部分はきちんとしてあって、ある意味緩急がしっかりしているので、全体を見ればちょうど良いのかもしれません。

ああ、そうだ。開演直前&幕間終了直前に、舞台版キャストによる映画広告が入ります。初日は開演前・勘九郎さん、幕間・加藤さんでした。これはもしや…と思っていたら、どうやら日替わりで別のキャストのものも有るようです。番手順なのか、ランダムなのか、わからないですが…。幕間には、劇場販売グッズの紹介映像(こちらもキャストが参加している)も流れますので、早めのご着席をオススメいたします。

 

舞台について(美術周りと冒頭ちょっと)

新国立劇場、中劇場。舞台が広く、奥行きもあり、高さもある劇場で、かなり大胆な使い方をしていました。奥行きを生かした演出をした~という話を聞いていたので、興味深く見ていたのですが、冒頭でなるほど、と頷けます。ああ~なるほどな~それは前の劇場じゃ入らなかったな~!!みたいな。そこにも細かな小ネタが盛られていて、最後までそれを楽しめました。

初演同様、映像(プロジェクションマッピング)と、表は岩・裏は白壁の中~大型美術数個を組み合わせ、村にお堂に合戦場にと、変幻自在の場面転換をしておりました。舞台の両端に映像が投影されることもある(イメージとしては、シアターオーブの字幕設備みたいな感じ)ので、あまり前だとそのあたりが見えないかも。盆も大活躍! あとワイヤーや、大型に近い岩パーツで、高さのあるアクションをすることも多く、舞台全体を使い尽くしていました。

合戦の殺陣や舞台の動きも凄くて! 劇場の広さを上手く使いつつも、客席通路も駆け回り、人の密度や熱量、その動きの激しさ、疾走感をしっかり見せて、映画とはまた違う、リアルな戦場を創り上げていました。大勢で魅せる部分ももちろんありますが、終盤には各キャラの見せ場もきちんと設定してあり、キャラ好きとしてもぐっと来ました。

冒頭の映像や、早速の客席降りで、観客の意識をぐわっと持っていくのが見事。長宗我部元親の遺児を迎えての宴席、だけど……??と、賑やかで楽しく、でも謎があって引き込まれる展開が面白いです。ここでもう既に、大量すぎるほど大量の小ネタを仕込んでくるので、笑いっぱなしになります。小ネタと言えば、某大河ドラマいじりもたくさんあり…数え切れないほどです。

その後、佐助と幸村との出会いなど諸々あり。

話飛んでメインキャストのお披露目シーン。こちらもまた、メインテーマに乗せてアゲアゲになる上に、キャスト各々に合わせたネタが仕込んであって楽しいです。初めて見に来た方にも親切設計。個人的に火垂ちゃんと才蔵が可愛くて好きでした。

そして物語へ……と言う感じです。

 

キャスト

とりあえずメインキャストだけ~。

猿飛佐助(中村勘九郎

待ってましたの猿飛佐助。愉快痛快嘘八百!の台詞が好き。もー、動く、動く、喋る、ネタを振りまくる! 人を引っ張る引力も凄い。ちょっとした動きに視線がかっ攫われていきます。初演は初日からしばらくは、高めの声も出していたけれど、今回は特になし。喉に来るのかな。それは無くとも激しくうざく、でも熱いキャラクターが好きです。人が好きだからこそ、人に愛されるキャラクターでもあるのかな。歌舞伎の方だからというのと、ジャンプっこだからというのが合わさってるのか、とても魅力的な「主人公」を創り上げられていました。お頭とのバトルも良かったなあ。面白さとかっこよさがくっついていた。なんかねー、変な話、最高のシーンで「ドン!!」っていう見せゴマ*1を幻視します。


霧隠才蔵加藤和樹

イケメェン……。普通にしていると格好いいのに、格好いいことをしようとすると、不思議と可愛いと言うか、面白いと言うかになるのはなんだろう。顔全体も格好いいのですが、忍び手ぬぐい?口に黒いマスクをあててるところが格好良かった。桃李君の才蔵は、ちょっと潔癖で真面目な感じがあり、そのせいで佐助を許せないところがあった気がするのですが、和樹さんの才蔵は佐助のこと意外と面白がってる感じがします。あ、そう、初演は言い間違いカップルは火垂と才蔵だったのですが、再演は多分佐助と才蔵がなにか言い間違ってた…気がする。冒頭登場シーンにミュージカル曲歌唱あり。一応日替わりっぽい? 初日はレ・ミゼラブルの「民衆の歌」でした。ワイヤーアクションも多く、比嘉ちゃん(初演火垂)がやっていた、ぐるんぐるんするやつ(ワイヤーに吊られた状態で、まっすぐ立ったまま前に回る)を継承。仙九郎とのバトルも超ど迫力です。


火垂(篠田麻里子

この間、自分の女忍好きを認識したんですけど、麻里子さまの火垂ちゃんは、最高にかっこよくて可愛かったです。正面からの回し蹴りで、相手の頭まで届くのが凄い。隣の席の人が「うぉ!」って思わず声を出していた。AKBの振りもちょーっとだけやって可愛かったあ。福岡弁?を披露する場面も。立ち姿が美しく、女忍としての鋭さを感じさせつつも、恋する乙女のかわいさ、いじらしさもあってたまらない。


真田幸村加藤雅也

イケメェン…。「いい男は…つらーい♪」の台詞もさることながら、初演大楽以上にボケとネタをぶちかましていて、凄いジワジワ面白いイケメン。茶の湯の好きなおじさまから、茶の湯の好きなおいちゃん(ただしイケメン)にレベルアップしていた。でも決めるところは決めるし、格好いいんだぁ…。


根津甚八豊臣秀頼村井良大

甚八:スレた小猿。頭のとんがりを弄るのも、猿っぽさと虚勢を張ってる(威嚇する時の動物みたいに、高さを出す)感じが出てて良い。荒くれ者や武家の出が戦場を駆け抜けていく中で、一人だけ素直に恐れを見せる芝居が良かったです。あと大阪城についたところで「でっけー?!」とか言ってるのも素直。

秀頼:殿様だ…。育ちがよさそう。大阪に集まった武将達をしっかりと束ねる殿でありつつも、素直に母である淀殿を敬愛している様子がとても良い。立ち振る舞いが上品で、好き。あと久々に髷と着物姿を見たので、逆に新鮮でした。


三好伊三荒井敦史)&三好清海駿河太郎

三好兄弟は快活な馬鹿力で、妙に好感が持てます。初演ではおっとこぬしさまみたいな大きなイノシシを一頭狩ってきたのですが、今回は背中に背負える大きさのイノシシを二頭、それぞれ狩ってきていて、異様に可愛かったです。◯◯ってなんや?!と聞くところも可愛い。甚八を末の弟扱いしているのが、村井さんの甚八だとまたしっくりきて良い感じです。一カ所、なんや?!って聞いたのを、甚八に笑われて、なんやお前~!!と怒っていたところがあった。


由利鎌之助(丸山敦史)&筧十蔵高橋光臣

言わずと知れた鎌十コンビ(公式呼称) ボディタッチが増えた…気がする……? 寡黙だけど、意外に笑う鎌ちゃんと、さらに色気を増した十蔵ちゃんのコンビが可愛かった。十蔵ちゃんは、安酒をごまかす為の一味唐辛子を持っていたはずが、今回はハバネロにランクアップしていました。鎌之助も十蔵につれなくしつつも、彼からのデコおむすびは受け取ったりと、なんだかんだ優しい男。二人の死も壮絶で……初演で、死に際にそっと手をつないだのが好きだったのですが(たまたまそれが出来る距離に倒れたため)今回は出るか。


海野六郎(栗山航)

可愛い。小姓さんからあがったばかりか、まだ小姓かな?という印象。譜代の家臣ではあるものの、まだ落ち着いてはいず、若さが垣間見えます。今回は眼鏡がなく、知的キャラ枠から若干はずれた印象ですが、正直表情は見やすくなった…。笑 佐助達に怒っているところが子猫っぽくてキュート。でも真面目で、幸村さまへの忠義に厚い。望月から教えてもらった鉄砲を手に、最後の最期まで戦い抜く姿にぐっと来ました。


望月六郎(青木健)

さらに訛りがひどくなった…? 大助さま命の家臣っぷりが良い。「大助さま~。おーこーらーなーいー!」となだめるところは、二人の関係性というか…手綱のとりっぷりを感じてほっこりしました。握り飯シーン(甚八が調子乗ってるところ)では、前は海野のそばにいて、その後大助側に移動だった気がするのですが、今回はずっと大助さま側。海野とのやりとり(望月はおにぎりを鎧の下、着物の袂に入れていた。海野はぺったりした鎧のため入らず)が無くなりましたが、大助とのやりとりが増えていて、二人の様子を見れて良かったです。


真田大助(望月歩)

可愛いなあ、若いなー。幸村への盲信ッぷりも、本当にピュアでまっすぐでたまらないです。これは望月も、お守りする使命を全うしたくなる…本当にお守りしたくなるだろうなあと思いました。それだけに終盤に真実が明かされる展開では、ヒリヒリするような彼の思いを感じました。その後の心を決めた様子は、凜々しく、美しく。最期も素晴らしかったです。


仙九郎(石垣佑磨

逆さづりも相変わらず…あとちゃんと今回も、かけ声が叙々苑でしたね。お頭がボケキャラにシフトチェンジしたので、ツッコミ側にまわるかと思えば、意外とそのままボケは続行。初演や映画でもうっすら感じていたのですが、鎌十コンビ……十蔵への横恋慕が滅茶苦茶明確になっていて、知ってたけど……うん…となりました。十蔵好きだったんだなあ。才蔵との戦いで死ぬけど、なんだかんだ幸せになって欲しい。


久々津壮介(山口馬木也

火垂ちゃんパパであり、佐助達のお頭。剣客商売が大好きで、大治郎さまである馬木也さんが出ると知って、ワクワクしていました。初演のままだと割と出番がシンプルだなあと思っていたら、かなり…増えた……あとのんべいキャラがつき、ちょいちょいボケもかますようになりました。太鼓をたたいてまわる太鼓師(仮)との絡みもあり、終盤に太鼓が鳴らないのを知って、「死んだか……」と呟くところもありました。その人死ぬんだ…舞台上に実在するんだ……。終盤の柳生vsお頭がなくなった分、以前は柳生vs佐助だったシーン(多分)も、お頭vs佐助になり、舞台美術を大胆に使った大立ち回りも見られてホクホクでした。


淀殿浅野ゆう子

セクシー・バス・ストップ!(ポーズ) 淀殿は再演が一番好みかも知れない……お顔が綺麗、割とノリが良い、佐助に対してキレるのも可愛いです。お方様として、母としての美しさ、強さがあり、物語のキーキャラとしての存在感をしっかり持っていました。カーテンコールでは、十蔵と共に羽扇子を持って、ジュリアナ東京がごとき華やかさ。十蔵の方が扇子がでかいのが気になる。パラパラ(初演)から時代がさかのぼっているのも。

 

 

その他感想兼雑談

また今度増えると思う。

甚八から見た物語

村井さん推しなので、村井さんの演じるキャラクターの視線から物語を見ることが多いんですけど、今回は特に甚八の視線を追いかけていて。そうすると、なんとなく、真田十勇士の物語の中心近くにある、「親子の情」がクローズアップされてきました。

十勇士として、大助と幸村の心のすれ違いと、もう一度寄り添い合う姿を見て。秀頼の影武者として、母である淀殿を守りながら、彼女が配下である武将達全てを犠牲にしても、秀頼を守ろうとしたのを見て。ただ見つめるだけだったけど、その中で甚八が触れた親子の情って、とても大きな物だったんだろうなあと。

甚八の親については「父親の代で武家から没落した」ということしか描かれていず、彼がどんな所に生まれ、どう育てられたのかは、全くわからないんで。その受け取った大きな物に対して、どんな反応を示したのか、どう感じたのかは、これからまた甚八の様子を見ていかないと、はっきりはわからないんですけど。

村井さんが海野六郎だった時は、幸村への複雑な思いが強かったので、改めて物語の一面を見ることが出来たのが嬉しいです。

あと、戦いばっちこいの荒くれ者と、武家の出の中で、一人だけまがい物の、現百姓(兼詐欺師)の甚八こそが、一番、戦の恐ろしさや、人の死の悲しさっていう真実をその目に写しているというのも、一つこの作品のテーマである「嘘がまことに、まことが嘘に」を体現しているんだなあとも思いました。

*1:遊戯王であり、ワンピであり、その他ジャンプ作品であり。見開き超格好いいコマ