Tida-Tiger

好きなものだけ好きなだけ。

KNOCK KNOCK KNOCK 或いは別れた記憶たち 感想

見てまいりました~!!
めっちゃ満足度高かった……好きです。
ここからは完全にネタバレありの感想です。お気をつけてくださいませ。

詳細

Corichサイトから転載

stage.corich.jp

期間:12/18~12/22

劇場:シアターサンモール

出演:野口オリジナル NPO法人 増田赤カブト 小岩崎小恵 吉田翔吾 加藤慎吾 高橋ゆき 井上ほたてひも 横尾下下 前原一友 吹原幸太(~以上、ポップンマッシュルームチキン野郎)

ゲスト:福地教光 (バンタムクラスステージ) 平山佳延 辻 響平 (かわいいコンビニ店員飯田さん) 今井孝祐

~あらすじ~
自分と他人の脳を接続する機械、通称コネクト。それを使って他人から【記憶】や【アイデア】を聞き出すことを生業としている男がいた。彼のもとに、アルツハイマーになった老作家の頭の中から未発表作品の【アイデア】を見つけ出して欲しいという奇妙な依頼が舞い込む。依頼人は、そのアイデアを元に老作家の遺作短篇集を作り、一儲けしようとしているようだった。
この物語は、彼が老作家の頭の中から見つけ出した奇妙な物語を中心に描く短篇作品集である。だが同時に他人の脳に入り込み続けた男の、切なく残酷な人生の旅路を描く一代記でもある。
自分の本能に正直になって死にゆくか、全てを偽って生き続けるのか……決めるのはいつだってあなた自身なのだ。

 

OP映像

www.youtube.com

めちゃかっこよかった。

 

感想

※開演前パフォーマンスは割愛!つくのギリギリだったので……!!

Indigo Tomatoの感想でも言ったんですけど、個人的に構成が美しい物語が好きで。
これもホントに好きだった…

沢山のドアと、その住人。「物語の主人公」は誰であるか。メタ的でありつつも、きちんとキャラクターと観客の感情に寄り添う。

オムニバスもので、最後にひとつの物語としてつながるという話は、主催の吹原さんのTwitter(多分)で読んでいたので、いろいろ想像しながら見ていました。
でもその伏線、フラグもしっかり描いているんですけれど、同時に少しずつブラフもまいていて。必ずしも想像通りには決着しないけれど、納得できるし感動出来るという、 ものすごい構成力を見せつけられました。

役者さん達の演技もすごい良かったな…。面白いものを真面目に創るのってほんまかっこいいなってなりました。

主人公の幹雄くんは、あらすじにある老作家の他に、重体の殺人鬼の脳にも入り込んでいます。殺人鬼の記憶の中で、子供達が殺されていく姿を見て、精神的にダメージを受ける。そして、終盤に「もっと子供を殺した殺人鬼達の脳に入りたいんだよ!」みたいなことを叫ぶんですね。
それが、強い狂気を感じさせて、殺人鬼に感応してしまったのか?!みたいな怖さがあるんですが、実はそうではないことが、あとになってきちんと描写される。

各短編の感想。ここからバチバチにネタバレです。

What a Wonderful World

ざっくり説明:宇宙の最後を見届けた男。過去と未来が一体となるそこで、彼は死んだはずの娘と再会する。

この作品内で演じられる短編達は、上記のあらすじ通り、脳の中に入って思い出を見ていく幹雄くんが、アルツハイマー病の老作家の脳に入り込んで、主人公達から聞き取った物語で。
この物語を聞き取った後の幹雄くんが「それで? 物語はこれで終わりじゃないだろう?」って聞くのが、後々になって効いてきてグッときました。

ちなみに私はこの時点では、父・娘属性をもつのが老作家とその娘だけだったので、そっちの方とリンクしているのかな?という印象が強かったです。

 

みにまむ

ざっくり説明:身体が小さくなる病にかかった妻と、それを支える夫。見えなくなってもそこに確かにある愛。

一番泣いたかも。だんだんと小さくなっていく描写がすごい好きでした。
舞台上手に夫、下手に妻がいて(最後近くは下段と上段にわかれる)、それぞれの視線や芝居で、妻が小さくなっている様子を描いている。ちょうど自分の席からは、二人が完全に同時に視野に入らない感じなので、カット(画面)が別れてるように感じました。でもライトとかが上手かったので、劇場後方から二人を同時に見ても、分割画面みたいに見えるかも。

最後の最後、本当に小さくなってしまったところでは、夫の孤独を長く描きつつ、それまでは見えていた妻の姿を観客にも見せないことで、夫への感情移入度が増した感じで……それだけに最後に帰ってくる応えに泣いてしまいました。

 

透明組長

ざっくり説明:目に見えない透明のオヤジ(組長)と、舎弟達をつなぐ絆。

ありがとうスーツ(感想) ヤクザものも、スーツも、大変フェチくて好きです…。

真面目に演じていて、確かに組長がそこにいるって感じさせるのに、ちょっとしたところで破綻させて笑わせに来るのずるい……笑っちゃう…ってなりました。泣きそうになるのに面白くて、感情が騒がしいですよ。PMCさんのこの感情わっしょい感好きです。

 

るるる

ざっくり説明:繰り返し繰り返す消却された日常と、それに気づいた者について。

これ公演内容に書いてないっぽいので、あんまり詳細には書かないでおきますね。
(いろいろ考えながら席を立ったら、まんまとパンフレットを買い忘れたので、そっちに書いてあるかどうかわからない)

すごい緊迫した空気感を出しつつも、笑わせてくるのがすごかったです。

 

魔法使いの苦しみは彼にしかわからない

ざっくり説明:整形外科という技術を行使する者の功罪、あるいはその苦悩について。

自分が女性で、整形してぇ~せめて推しに会いに行くときだけ美女になりてぇ~~って思う反面、子供が出来たときに遺伝子は前のまま受け継がれるんだよな…と思うこともあるため、それがノイズになって、この短編から本編へと受け継がれていくテーマがしばらくわからなかったです。
でも多分上で書いたざっくり説明の方向性かな…まあ全部勝手な感想なので、あってるかどうかはともかくって感じなのですが。

主人公の幹雄と、その相棒一平は、コネクトという名前の機械を使って、人の脳に入って記憶を見たり、時には記憶を消す(記憶の入っている扉が開かないようにする)事が出来ます。物語が進むにつれてだんだんと、記憶を消すことにまつわる物語も見えてくる。それがとても面白かったです。

 

縦歩きのサイモン・クラブ

ざっくり説明:時空を超越するカニは、過去ではなく未来に目を向けた。

アンダー・ザ・シーな衣装で海中の生物に扮しながら、ガチ目に切ないSFするの泣き笑いしちゃうから勘弁してください。うそ。もっとやってください。

これも好きだったなあ…サイモンとテリーの絆も良かった。

 

普段、記憶や物語の主人公達は、扉の外には出てこないと幹雄くんは言う。でもこの物語の主人公は出てきて、幹雄くんに問いかけるんですよね。

「君の物語を聞かせて?」

何故物語の主人公達が出てきたのか。それは多分彼らが、幹雄くん自身でもあるから。彼を思って書かれた物語でもあったから、なのかも知れないなと思いました。

実は老作家は、幹雄くんの元義父。娘である紗理奈さんは、幹雄くんの妻でした。
幹雄くんは妻との間に出来た自分の娘を誰かにさらわれ、殺されたことをきっかけに、心を壊してしまい、悲しすぎてコネクトで記憶を消してしまったんですね。だからこそ彼は殺人鬼の脳にダイブし続ける。記憶はなくても、探し続けていた。

幹雄くんは今回様々なきっかけを得て、記憶を取り戻しそうになる。でも封印された扉は開かない。そして、今後自分がどれだけ苦しもうと乗り越える決意をして、相棒の一平にコネクトで自分の脳に入り、封印された記憶の扉を開いてくれるように懇願した。

一平が記憶の扉を開け放っていくシーンがすごいかっこよくてな~~~~!!

記憶の扉が開けられていく度に、各短編の主人公でもあったキャストさんが、幹雄くんの記憶に扮して、その記憶の再現をするんですよ…その感情と物語のオーバーラップが最高すぎてぶわわわってなりました。

ラストシーンもかっこよくて……最後までたっぷり大満足だった……。

 

公演についての余談

今回、登紀子プロデューサーがAmazonの欲しいものリストと差し入れ受付サイトトリートを使っていて、いいなあと思いました。

treat.love

お花ももちろん好きなんですけど、相手から欲しいものを欲しいと言ってもらえると貢ぎ甲斐がある…
プレゼント選ぶの下手くそ芸人なので、無駄に悩まなくていいし。
私は欲しいものリストの方から、ちょっとした生活必需品系を贈りました。

あとこういう形で、物作りの現場に関われるのって、なんか嬉しいですよね。
まあ貢いだのに~ってなるひとも、いるかもしれないしいないかもしれないけど。
それはそれとして、お祈りするだけじゃなくて、確実にお力になれるのってやっぱいいな。

今回はありがとうございました。楽しかったです。