Tida-Tiger

好きなものだけ好きなだけ。

Take Me Out 2018 感想

てわけで、Take Me Out 2018行って参りました!!

2016も見たかったのと、五月楓氏のブログでわくわくしたのと、

推しがゲネに行っていたので。

最近は*1あんまりやってませんけど、こういうストーカー的観劇*2は色々と楽しいので好きです。

やー、なんか、すごい泣いてしまって!

ハンカチもティッシュも手元に無いし、向かいの人は泣いてないしでテンパりました。そして刺さるメイソンの台詞。笑

 

ここからは多少詳しめの感想をば。フツーにネタバレします。お気を付けて下さい。

 

舞台美術

センターステージタイプで、左右に席がある。ハンバーガースタイル(?) ある意味スタンド席的。

開演前は網が舞台の端、座席の前にあり、それ越しにステージを見る形だったので、よりスタンドっぽかったのですが、その網が可動式で……開演後に役者さんが網を動かして視界が広がってしまったので、謎に当事者意識が生まれてビビりました。

網兼ロッカー(三枚連続した縦長の網で、コの字型に囲う形に出来る)が自由に動くので、同じロッカールームでの話で、座席も動かないけど、色んな視点から見ることが出来て面白かったです。

2016年版とはだいぶ演出が違うとのことで。そっちも見ておけばよかっtぁあああとなりました。

藤田さんの演出というか、こういうちょっとした(でもそれが視点を変える)発想が結構好きです。キャラクターの個性とか心情を丁寧に汲むのも好き。あと全然関係ないんですけど、藤田さんの襟足に若干のインプリンティングを覚えている*3

 

全体感想

野球、って言う核で繋がってるけど、全然別の方向を向いた男達の話。と思いました。

野球という一点で繋がり、その中で言葉を交わし、言葉を尽くすことで、真実が明らかになったり、真実が隠されたり、真実であっても受け入れられなかったり、真実が漠然としたりする。

作中ではほぼボールが出てこなくて、最後の最後に出てくるんですが、そのボールを持つのがダレンとメイソンなのが。野球にまつわる(あるいは人と人の関わりにまつわる)全てが幸福なわけではないけれど、でも確かに愛がそこにあるような感じがしていいなあと思いました。

タイトルはメジャーリーグ定番の"Take Me Out to the Ball Game"がベースかな。

BASEBALL "Take Me Out To The Ball Game" - YouTube

でも多分、「本当の自分を外に出す/明らかにする」ダレンでもあり、「新しい世界を手に入れる」メイソンであり、あるいは「野球しか行き場のない」シェーンであり、キッピーでもあると思う。

あと…めっちゃ余談なんですけど…カワイクなくちゃいけないリユウとかでも思ったこと。日本だと、舞台とか見に来る人って、金銭的余力があり、舞台芸術についての情報を手に入れられる層にいて、なおかつそれに興味や愛を持つ人の方が多くて。そういうのって比較的リベラルであったり、知的に中流ラインにいると思うんで、カワイクだとグレッグ、TMOだとキッピー・メイソン・ダレンあたりの方が共感しやすいんじゃないかなと思うんですよ。だから、カワイクだとケント寄りの、TMOだとシェーンやトッディ寄りの人が見た時に、どこが刺さるのか、どんなことを考えたのか知りたいなと思いました。でもそういう人と友だちじゃないし、そういう人は多分感想ブログはあまり書かない…。

※4/17 追記

観劇層が選民(笑)みたいなニュアンスで書いてしまったなあと、何度か読み返して思いました。笑 そういう訳ではないんですけれど。

単に、舞台の情報をキャッチできる層にいて、それを受け止めるミットを持ってて、なおかつ実際に足を運べる余力があるとなると…という話で。もちろん、どんな状況であっても観劇が好きだ!っていう人はいるので、全部が全部そうじゃないです。それはそうとして、単純に個人の性質に依存せず、その一つのコミューンの中で流通するミームの傾向は違うよねという話。そこに上下はないんですよ。差異があるだけで。

これは学歴の話で、観劇するしないの話ではないけど、まあ似たような分断があるなと。シェーンの話にも通じる部分でもあるし。

結局は「舞台に興味ない人に舞台が興味ない(だろう)キャラを見てもらいたい」という、限りなく無理のある願望なんですな。なぜなら舞台を見に来た時点で、その人は舞台に興味がないとまでは言えない状態になるので。前も言っていたとおり、舞台映像をテレビで(出来れば地上波で)見れたなら、舞台を見るだけの状況ではないけれどという人のもとにも届くのになあと言う話にも繋がるんですけど。

 

※追記ここまで

 

 

色々と感じた事は各キャラクターごとに。

分量とか順序が割と適当ですがご勘弁。

 

キャラクター感想

メイソン(玉置さん)

ガチ恋の夢の具現化かな…??ってなりました。初めは野球とかダレンに興味がなかったけど、彼のカミングアウトをきっかけに興味を持ち、色々あって彼のために仕事をするようになって。段々と野球にも惚れていって、ダレンを構成する全てに惹かれていく。

名言というか、刺さるな~って言葉が多くて。ワーって喋ってるんだけど、そこに熱があるから一つ一つの粒立ちがいい感じ。真面目だからすこしの逸脱でも充分に酩酊できる、みたいなのとか。感動して泣くなんて…って思ってたけど、今では違うんです、とか。割とめいちゃんが喋るとこで泣いてた。

ワールドシリーズを終えて、キッピーとダレンに今シーズンはどうだったか問いかけたあとに、彼自身が語る、昔のメジャーリーガーの言葉が良かった。チームは勝ったけど父親を亡くした人の「言葉に出来ない」(言葉にするのが難しい?かも)という言葉。それはある意味、言葉の演劇(藤田さんがパンフに書いている)この作品の根底にあるものでもある。

あと「指輪はいつくれるんですか?」からの流れが、すごいロマンスだった。可愛すぎた。ジャンピング抱きつき好きだ。こう、大好きな人に、ファンであることを受け入れられて、なおかつその人の支えになれるのって、滅茶苦茶羨ましいなと思いました。

メイソンは作中唯一…唯一かな、スポーツマンじゃないのですが、そのせいか立ち方とか歩き方が緩めで、内勤感あって可愛かったです。

 

キッピー(味方君)

冒頭からめっちゃ喋ってるのを見て、熱海行けば良かったな…という後悔先立たず祭りをしました。デウス・エクス・マキナになりきれないキッピーが好き。

途中でシェーンの手紙をキッピーが書いていたので、「ん?代筆?でも代筆で誤字するか??」と思っていたら、なんと実際にキッピーが書いていて、シェーンは知らないという。

「言葉にすれば伝わる」と思っている感じかな。だからこそ「言葉を知らない」シェーンの全てを知ることは出来なかったし、「言葉にしたが伝わらなかった」ダレンとは断絶がある。シェーンについてはキッピー自身が「彼は言葉を知らなすぎる。彼自身を形作る言葉」ということを言っていたけれど、そう言った以上のシェーンであったという。

「白人じゃない」と「有色人種」は同じじゃないかと言うシェーンに、「それは違うものなんだと信じることが大切なんだ」みたいに返すところが好きだった。そこまで割とつらつらと言葉を操ってきた彼が、すこし悩んで答えるのが。

 

ダレン(章平君)

挫折を知らない完璧なヒーロー。快活で真っ直ぐで…個人的にデイビーの葬式に行って始めて疎外感…受け入れられなさを感じたって言ってたのが、彼の強さというかを感じました。でもデイビーに拒絶された時の気持ちを葬式の場面に投影している部分もあるのかな。

なんか……ダレンを巡る冒険の物語だし、彼自身も結構傷ついたり否定されたりしてるんですけど、私自身は彼にはあまり思い入れがない…。

トッディはいなしてるけど、シェーンに対しては怒ってるのが、凄く人っぽくて…有色人種チームの感情の代弁してみるも、監督に彼らにはもう聞き取りしたし、大丈夫って言ってたし、と言われちゃうのが、また。キッピーの「人間みたい」に対して、「それ、退化してるじゃないか」って返すのが好きだった。

シャワーシーンは綺麗で格好良くて、キッピーが言ってた「自分自身の中にあるホモセクシャル的な部分に気付くのが怖いんだ」みたいなのを思い出してました。

 

シェーン(栗原さん)

シェーンは…好きです…。痛々しい過去と、野球・投球にだけ執着している様子が切なくて悲しくて。教育がなされていないからこそのコミュニケーションの不全、共感性の欠如、価値観の偏りを体現した芝居が凄かった。思考するためには言語が…言葉が必要で、でもシェーンは自分のいた場所、自分自身を示す言葉すら知らなかったから、自分自身のこともわからなかった。

シェーンはイデオロギーのない差別意識(と、パンフレットに書いてあった。藤田氏の言葉自体も割りと好きだな)の持ち主で。キッピーの書いた彼の手紙は、ある意味本当でもあり、嘘でもあった。有色人種への差別とか、ゲイの否定とか、それが誰をどう傷つけるか実際に知らなかったし、そんな考えもなくて…。

剛速球マンだけど、本人の肩が弱いのがやや気になる。でもこのシェーンは栗原さんだからこそ創れたんだろうなというのもあるので難しい…。

喋れって言ったり、黙れって言ったり!とか、投げたい!投げたい!が悲しくてたまらなかった。

もしかすると、キッピーが新しい言葉を与え、ダレンが新しい世界を見せたせいで、シェーンは自分自身を壊してしまったのかも知れないな、と、これを書いていて思った。

 

デイビー(Spiさん)

シェーンと異なり、自分のイデオロギー、決まり、信念に則ってダレンを拒絶する人。「自分をさらけ出せ」って言うくせに、自分の思うような姿じゃないと醜いのなんのいって拒絶するの、割と酷いな?!という。

でもその清らかだからこそ汚濁を嫌い、純粋だからこそ異端を拒絶するところが、凄い良い感じに出てて好きでした。ダレンと会話し終わったあと、上着のボタン留めたのが妙に印象に残っている。

 

ジェイソン(小柳さん)/トッディ(浜中さん)

善良な小市民。カミングアウトを受け入れようとする人と拒絶する人。

ジェイソンはキャッチャースタイルしていると、全盛期の古田敦也さんにめっちゃ似ているな…と思いながら見ていました。訛りが可愛い。

トッディはシェーンにやや近いんだけど、もう少し大多数寄りだから、もっと悪意がないんですよね。シェーンとデイビーの間で、なおかつ大多数側。悪意なく普通を推し進めるタイプ。

 

マルティネス・ロドリゲス・カワバタ

異言語有色人種チーム。言葉によって伝えられるもの、伝えられないものを、言語の隔たりという形でも考えさせられた。

翻訳してもう一回、のシーン、巻き戻る前後に、キッピーも含めてジョジョ立ちしてるんだけど、あれは時間系のスタンド持ちメンバーとかなのかな…立ち方であれは**だ!とかまではわからないのでアレですが。

 

スキッパー(田中さん)

「息子だと思っていた」「…過去形だ」のやりとりが切ない。自分の感情で無理を押し通そうとするのはどうなんだ~って言ってるところは、まだお父さんだったのかなあ。

 

すごい、いい作品でした。また再演があったら見たいし、藤田さんの演出の作品も見たいです。

*1:フットワークが軽くなかったので

*2:推しが観にいった、観にいくだろう作品を観にいく

*3:ジャージー・ボーイズ PV撮影レポ - Tida-Tiger の時、指示を受ける間中ずっと見ていたので