来て、見て、書いた。

自ら足を運び目にしたものを書く方向性。

蜜蜂と土曜日

 

欠片も書く気力がなくて、土曜日になった金曜日日記でございます。

ついった見てるとわかるとおり、元気に低気圧にメンタルをやられております。割と仕事の方もいっぱいいっぱいです。

まあそれはともかく、ようやく「蜜蜂と遠雷」を読み終わりました!

 

蜜蜂と遠雷

蜜蜂と遠雷

 

終盤とか、各視点で一回ずつ泣くので、ほんと読み進められなくて……結局一ヶ月以上かかってますね…読み終わるまでに……。
やー、でも、本当に良い作品だった。読み終わってもったいない気持ちもしますが、でもこれが小説で良かったとも思っている。
本屋大賞に権威を認めてないので*1、流石は!みたいなことは言わないですけど。それはともかく、私は「この作品が好きだ」と思いました。

はじめの方は、「ああやっぱ、音楽物の小説でも、焼きたてジャパンみたいにリアクション芸バトルになるんだな……」*2と思っていました。ピアノ、その曲の中に、どんな物語を描き見るか、というイマジネーションの表現のバトル。でも段々と、そう客観視・傍観していられないほどの筆力に飲み込まれ、その感覚そのものを、自分が持っているかのように感じる程になった。すごい。
なんだろうな……それこそじゃぱんだと、なんやて(仮)のリアクション芸を見る、って方向になるじゃないですか。ソーマも、やっぱ最終的には可愛い子のおはだけが来る。つまり感覚を体感してるのは他者、キャラクター自身で。でも文章だと……前に何かの論文で見たんですけど、人間の脳は意外と主語とかを理解していなくて、そこにある文字そのものを受け入れているらしくて。だから「あいつはバカだ!」って書いても、意味上ではもちろんそう認識できるけど、最終的には「バカ!」っていう言葉とその強い否定だけが頭に残っちゃう、ダメージになる、みたいな。それが関係しているのかわからないんですけど、とにかくあの筆力、勢い、瑞々しさで、曲へのイマジネーションを書き連ねられると、もうそれが、誰が主観で感じている感覚かはおいといて、頭の中にそのイメージ自体が降り注いでくる。自分自身が主体となってイメージを感じられる。

あと、小説家志望とかによく先生が言うことに「一人称他視点はやめた方がいいよ」っていうのがあるんですよ。このシーンは誰視点なのか?っていうのがわかりづらいから。志望者は特に、書き分ける技量がないし、キャラクター設定も、それぞれの個性が明確ではない場合が多いので、出来るだけ避けた方がいい。
でもこの作品では、もう当然のように多用する。各キャラクターの視点が割と短いスパンで入れ替わる。でも、一行目で誰なのかわかる。それは筆力もあるし、各キャラクターの背負っている過去や、今のスタンスが違うことを丁寧に描ききっているから。で、しかも、そのキャラクターたちが一つの曲に対して、それぞれにリアクションをするから、曲の多面性、そして普遍性を、しっかりと描き出せてもいる。もう、スゲーーーー!!ですよ。

あとそう言う流れでもう一つスゴいなーって思うこと。ストーリーのある作品だと、肝に「主人公の成長」があると良い作品みたいなのがあるけれど、それをやろうと頑張った結果、「前半と後半で主人公が別人になってます」みたいになっちゃうことあって。それは成長の段階が見えなかったり、なかったりするから発生するものなんですけど。この作品では大幅にそれぞれが成長する(特にあやちゃん)けれど、全員の変化が本当に繊細に描かれていて、それこそコマ撮りされた草木の芽吹く様のように、確かに同一個体の成長が感じられるから、スゴいなと思いました。(感想) 生まれ変わるほどに変化しているけど、確かにその人である事、同じ人生、背景を持っているとわかるっていうの、すごいですよ。ほんと。

終盤になると、もう、素晴らしい物に出会えた感動、っていう感情そのもの自体が、自分の胸にあって、泣きっぱなしで…。

でも、その上でズルいな~って思っちゃう。この本を読んで体感した「素晴らしい作品に出会えた感動」が、そのまま、この本に出会えた感動になっちゃうよ!!!!作中の気持ちを現実に投影してしまう!!!実際に感動したけど!!!!

あと、これ、小説で良かったなあってのも思いました。だって、あやちゃんの成長を振り返って見られるし、明石さんの演奏も、もう一度「聞く」ことが出来るから。

音楽は一瞬の永遠で、小説も、初めて読んだ瞬間の、あの目映く溢れる感情は一瞬の永遠だけど、文字そのもの自体はそこに留まって、もう一度、その瞬間の在処を探りに来ることを許してくれる。

読んでは泣いて、また戻って読んでを繰り返して、ようやく読み終えた「蜜蜂と遠雷
本当に素晴らしい作品でした。

 

自分もいつか、こんな風に、気持ちをかき立てられる作品を書いてみたいなあ……。

なんか、まあ、いろいろしんどいですよ。うん。何が書きたいのかーとか、これでいいのかーとか、考えると止まらないし。何がいいのかもわかんないし。でもプロットも書かないで何が書きたいのかとか言ってても、暗闇で目をつぶってくるくる回ってるみたいなもんでもあるし。ほんと、リアル・マーク・コーエンなんです。前もRENT時期に、同じような状況にはまってた気がする。でもあの子もよくよく考えると、終幕でも「まだ闇の中♪」って歌ってる……歌ってる場合か……仕事もぶん投げたのに…。うーんうーん。仕事ぶん投げても闇は晴れないもんなのか。

なんか、こう、もうちょっと、居直りたいです!!居直り強盗!!(?)

*1:芸術が民主的に定められるなんて奇妙な話だ

*2:ジャパンがリアクション芸の始祖ではないと思うのですが、その芸をしっかりと昇華して作品の根幹(というかオチ)に据えてきたのはジャパンかなあと思うので、こう言っています