Tida-Tiger

好きなものだけ好きなだけ。

銀河劇場がなくなるのが悲しい、という話

本日、代々木アニメーション学院を運営する株式会社代々木ライブ・アニメイションとその親会社である株式会社キョウデンエリアネットより、2016年2月1日付で、株式会社ホリプロより「天王州 銀河劇場」を取得したことが告知されました。

正直、ショックでした。

これ以降の記事は、批判・拒絶・嫌悪や、悲しみなど、強い感情の露出した内容となっております。出来るだけフラットに書きたいと思っていますが…申し訳ありませんが、ご了承下さい。

 

 

自分自身が、ここまでショックを受けるとは、少しも考えておりませんでした。今のところ一番好きな劇場はクリエですし、常に銀劇への強い思い入れを持っているというわけではありません。直近で行ったのは銀河劇場(ロボ・ロボと私のホストちゃん)ですが、普通に…いつもと変わりないものとして、その空間と作品を楽しんでいました。それが、こんな形で失われるなんて、思ってもみませんでした。

半日程度騒ぎつつ、自分と向き合った結果、いくつかの要因を見つけたので、それぞれを書いてみたいと思います。

 

【日常の崩壊への恐怖―ずっとあるものだと思っていた】

ここ別に読まなくても大丈夫です。そもそも、全部読まなくても問題ないです。全部、全部、私情です。

今すごく、日常が変わることが怖いです。

最近行った劇場は、銀河劇場です。ロボ・ロボと私のホストちゃんを観に行きました。別にそこまで常に意識している!ってほど、銀河劇場をひいきにしているわけではないので、普通に…いつもと変わりないものとして、その空間と作品を楽しんでいました。シャトナーさんのオリジナルココアを飲んだり、初日に見事1位を取った夕妃にペンライトをぶん回したり。SHOW ル・リアンの村井さんピンのポスターは、相変わらず麗しくて、ニコニコしてしまいました。

あの場所が「日常」だったからこそ……変化してしまう、崩壊してしまうということに、強い恐怖を抱きました。

「劇場は、潰れます。」とてもキツいキャッチコピーです。でも今この瞬間だからこそ、強く惹きつけられ、苦しくなりました。

 

【銀河劇場が好きだ】

銀河劇場が、好きです。先にも書いたとおり、そこまで常に意識しているわけではないですが…でも純粋に好きな劇場でした。

 

村井さんと出会った場所

村井さんを初めて生で見たのは、舞台『弱虫ペダル』初演。

場所はまさにこの銀河劇場、でした。

舞台『弱虫ペダル』インターハイ篇 The WINNER - 来て、見て、書いた。

細かいことはこちらのレポに書いてありますので割愛しますが、とにかくこの銀河劇場で惚れて、その熱を冷まさずに、ここまで追いかけてきました。いわば思い出の場所です。SHOW ル・リアンが決まった時には、また大好きな村井さんを、銀河劇場で見られる! と、とても喜びました。毎公演惚れ直してはおりますが、またまた惚れ直しちゃうなぁと、そんなことを考えていました。

銀河劇場の中心で輝く村井さんの姿こそ、私の恋の始まりでした。

 

舞台作品と出会った場所

舞台作品の楽しさを知ったのも、銀河劇場でした。

初めて、自分の意思でチケットを買い求めて舞台を見たのが、舞台『弱虫ペダル』でした。村井さん達のパワーマイムを目にして、舞台ってこんなに楽しいんだ! こんなことも出来るんだ! と、強く感動しました。初めて冒頭部分を見た時の衝撃は、今でも忘れられません。技名「捨てルンです」。ロードバイクにまたがると見せかけて、後方に投げてハンドルライドに移行する…。スタートの緊張感が、一瞬かき混ぜられて、より強い引力を持った感じが好きでした。

そこからこんなずぶずぶと舞台沼にハマってしまいました。どの位ハマってるかは、とりあえず2015年 観劇記録を見ていただければわかるかなと…それでも同じのに何度も行っていたり、意外と種類の幅が狭いので、まだまだだと思います。多分。でもここまで好きになれたのは、この場所でペダステを見れたからだと思います。

 

Stra de rouge

銀河劇場バーコーナー「Stra de rouge」

バーテンダー・モンチーのいるこのコーナーは、とても暖かくて素晴らしい場所でした。公演ごとに、作品にあわせたオリジナルドリンク・カクテルを作られたり、弱虫ペダルや緋色の研究では、俳優さんの発案でオリジナルドリンク・カクテルを作ってくださることもありました。作品と密接に関わっていくところが、とても好きでした。

本日更新されたモンチーのブログは、とても優しく諭すようで、それがまた切なくもありました。

 

スタッフさん、お世話になりました

銀河劇場のスタッフさんは、とても誠実で優しい方達ばかりだと、感じております。

実は先日、敷地内で転びまして…その際にも、冷やす為の保冷剤を下さったり、小まめに気遣ってくださったりと、本当に丁寧に接してくださって嬉しかったです。正直あの時は精神的にも不安定で、迷惑かけて本当に本当にすみませんごめんなさいごめんなさいごめんなさい、という感じだったので、対応の優しさのおかげで、心が折れずにすみました。お陰様で、顔も痣にならず、今ではほとんど回復しました。

その節は、本当にありがとうございました。

 

名前が好き

天王洲アイルの銀河劇場。略して銀劇。かっこいいです。セーラームーンみたいな感じで大好きでした。

堀さんの書かれていた、名前の由来も、本当にぴったりでかっこいいと思いました。

あと、なにげに書いたツイートが結構RT伸びてて、ちょっと笑いました。

 

 

【銀河からYOANIへ―変化についての感情】

素直に書きます。そもそも、私は予アニが好きじゃないです。

昔からあまり良い話を聞きませんし、昨年もイラスト報酬の不払いという問題が起きています(過去のイラスト報酬“不払い”問題で騒動 代アニ、漫画家とのトラブルで公式見解 - ITmedia ニュース)。色々と引用してしまうと、印象の操作になってしまうので、とりあえずこの程度でとどめます*1が…根底に不信感があるというのは書いておきます。

 

名前について

この告知を見て、始めにTweetしたのは「ごめん。名前クソダサい…。」でした。

YOANI劇場。知り合いが高確率でYAOI劇場と読み違えていました。私も読み間違えました。Twitterで見かけた「天王洲アナルのYAOI劇場」という文字に、めちゃくちゃしっくりくる…と思ってしまいました。来年度からは、代アニ東京校が水道橋へと移転して、YOANI東京校となるそうです。かっこいいのでしょうか…東京育ちとしては「首都大学東京」と同レベルにショッキングな改名でした。

 

劇場の扱い方について

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代アニサイトのトップページにあるこちらの画像。

「本番練習」ってなんでしょうか。

リンク先では、以下のように説明されています。

本劇場では、これまで通りの営業公演が行われることに加えて、代々木アニメーション学院と協力関係各社による2.5次元ミュージカル等の公演を予定しています。
公演に当学院の学生を多数出演させてプロとしての本番練習経験を積ませることによりデビュー率の飛躍的向上を目指します。

これまで通りの営業公演や2.5次元ミュージカルの公演に、学生さんを多数出演させるようです。

この謳い文句には、思うところがいくつかあります。その「思うところ」は大別すると、二つに分かれます。

 

1.「学生の育成」という観点からの不信感

2.「観客」という立場からの不信感

それぞれを、細かく書いていきたいと思います。

 

1.「学生の育成」という観点からの不信感

私事ですが。最近、講義・講演のお手伝いをしたり、子供向けの作品に携わったり、小説賞の下読みをしたりしています。そんな中で、前進する・成長する人々について考えることが多くなりました。もっと学びたいという意欲を持った人たちが訪れる講義では、教える人・学ぶ人の相互の熱意を感じています。子供向けの作品は、良いもの…お父さんお母さんの考える「良い」だけでなく、子供たちが楽しめて、夢の持てるものを、必死に考えています。下読みでは、求められずとも作品を書き上げる多くの人たちの、必死の努力や費やした時間、その想いを感じながらも、良い・面白い作品を選び、それ以外を退けます。

だいぶ昔の話になりますが、電撃の小説賞に投稿した方が、一次選考前に、まだ黎明期だったニコニコ動画*2に「俺は大賞を取る!!」と、作品名と筆名だけでなく、自分の顔も出して宣言する動画をアップロードした方がいました。その方は、一次選考で落ちていました。

でも応募した時は、皆、その方と同じだと思います。自分の作品のことはある程度信じている。受賞してデビューする夢を見る。もしかしたらミリオンセラー?! でもそんなに良い作品じゃないから…と落ち込むこともあるけれど、若ければ、最年少受賞者という冠にも憧れます。サインだって頼まれちゃうかも。そして発表の日に、喜んだり、悲しんだりする。

代アニの学生さん達も、きっとそういう部分を持っていると思います。デビューやヒットの夢を見たり、学べばより良い作品を作れると信じながら、学業に専念したり…時々はだらけることもあると思いますが。

何かを作ろうとする方達の思いは、ほとんど同じだと思います。

皆、なにがしかの夢を抱いている。学校や先生は、その子達の成長のお手伝いを出来る、素晴らしい場所・人物です。

ですが、この劇場で、いったい何が出来るでしょうか。

 

学校を修了する前に、本番を迎えるというのは、かなり恐ろしいことだと思います。もちろん、失敗も経験です。何事もやってみなければわかりません。ですが「学校で行ったこと」の為に、学生達の熱意や夢、将来が、大きく変わる可能性があるというのは、やはり怖いです。

舞台では、顔を出します。恐らくパンフレットにも名前が載るでしょう。まだ未成熟なまま、学校の勉強として舞台上にあがった時…観客はきっとその子のことを覚えます。ただ少し滑舌が悪いだけでも、学校名を背負っている分、余計に目立ちます。そしてその評判は案外と残り続けます。ネットに一度でも書かれれば、消えなくなるのです。

顔も名前も出した状態の彼らが、勉強中で未成熟なままの時の前評判(+学校の名前)を背負って、果たして、しっかりとデビュー出来るのでしょうか? 学校は、自らの行いで変化した彼らの人生に、責任を負えるのでしょうか。キラキラした煽りで、在学中に出演することは確約しています。しかし、その結果に関しては、何も書かれていません。

もちろん、これは逆のことが言えます。最高の評価を得て、学校を卒業してすぐに主演舞台を踏む、才能の塊のような逸材がいるかもしれません。そういう人は、別に学校行かなくてもいいじゃんと思いますが。

 

また気になるのが、代アニ自体に舞台関係のコースがないことです。大まかにまとめれば、声優ヴォーカリスト・タレントコースもライブ・エンターテイメントに関わるとは思いますが、お芝居を学ぶコースではありません。何を目指す人を、どのように育てて、YOANI劇場という大きな舞台に立たせるのか、判然としないのです。

大舞台に立ちたいという夢を抱く学生は、きっとこのきらきらと目映い文句に惹きつけられますが…そこへの道のりがほとんど見えないのが、気がかりです。

 

プロとしての本番練習経験という単語も気になります。

プロ。プロってなんでしょうか。

私は、他人からお金をいただき、相応の責任を負いながら、作品を創り上げる人々のことだと思っています。

学生さん達は、この公演に出る際に、お金を払うのでしょうか。貰うのでしょうか。多分、払って出るのだろうと思います。学校にお金を払って授業を受けている状態で、そのカリキュラムとして公演に出る。その時、目の前にいる観客席の方たちが、お金と時間と心を、作品に対して払っているという意識を、果たして持つことが出来るのでしょうか。意識がないまま、舞台に立った人を、プロと言えるのでしょうか?

 

未成熟なまま、未来への扉が閉ざされるかもしれない。成長させる為の策が見えない。プロ、という謳い文句に実がない。そんな状態のままで、学生達に、学校が何をしてあげられるというのでしょうか。彼らを育成することが出来るのでしょうか。夢に応えてあげられるのでしょうか。夢が潰えるのは悲しいことです。

夢を志すのであれば、学内だけでなく、多くの同じ夢を持つ人々と競い合い、1000人規模*3の舞台に、自らの力で立つ。そちらの方が、よほど人生の糧になるように思います。

 

2.「観客」という立場からの不信感

舞台を見る時、私たちは対価として少なくない金額を払います。まだ見ぬもの*4に対して、良いものであることを期待している。日々の疲れを癒やしたり、心をときめかしたり、あるいは考えさせられたり、そんな素晴らしいものと出会えることを信じているのです。

そんな時に、まだプロじゃない学生が、本番練習として出てきたら…正直、私はものすごく嫌です。デビューしたての初々しい演技、とかならまだいいですが、学生が練習しに来たというのは嫌です。初めから、発表会です、おさらい会ですといわれていて、それ相応の値段のチケットであれば、それを求める人は買うでしょう。ですが、良い作品を求めて、普通の価格で買ったチケットは、話が違います。期待して、投資したものに、練習で出ている子がいるなんて! プロとしての意識を持ち、支払われた対価に応える気概がない人を、観たいとは思えません。

また、2.5次元作品での「学生達によるプロの本番練習」だと、さらに不快感が増します。大好きな作品が、舞台化される、じゃあ観に行こう。この時、原作は、悪い言い方をすれば人質に取られているような状態です。まだ見たことのない舞台を、その原作への好意を頼りに、お金を払って観ようとする訳ですから。そうやって観たものに学生達が練習で出ていたとしたら…原作自体が、軽んじられているような感じがしてしまうと思います。

本当によいものを、自分たちは観られるに違いない。そう、信じられなくなる要素が、一つでも多くなるというのが、不安で、不愉快です。

 

YOANI劇場に立つ、プロとしての本番練習経験を積む、それらが、本当に学生にとって、そして観客にとって良いことなのか。それが、銀河劇場の扱い方として、正しいものなのか、はなはだ疑問です。

 

私は、銀河劇場がなくなることが悲しいです。大好きな場所が変わってしまうことが、恐ろしくてたまりません。「天王洲 銀河劇場」の運営に関するお知らせをみると、運営そのものが変わるということですので、大好きなバーも、親切にしてくださったスタッフさんも、いなくなってしまうのかもしれません。

ですが既に代アニは銀劇を取得し、名前を変えることを発表しました。

これからのことはわかりませんが…株式会社代々木ライブ・アニメイションとその親会社である株式会社キョウデンエリアネットの方々が、学生さんや観客、そして出演者、演出家、スタッフをはじめとする、数多くの関係者にとって、よりよい劇場として、銀河劇場を…YOANI劇場を、運営してくださることを、願ってやみません。

*1:でもググるといくらでも出てくる

*2:多分。YouTubeじゃなかったと思う

*3:と、画像には書いていますが、銀劇の客席数は746席。立ち見は250人も入れられない

*4:複数回同じ舞台を見るとしても、前日の公演は見ていても、その日のその公演自体は見ていない