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来て、見て、書いた。

自ら足を運び目にしたものを書く方向性。

殺意の衝動 感想

日記 舞台 村井良大

殺意の衝動の千秋楽、おめでとうございます。

殺し殺され生きもせず死んだ彼らが、ようやく一つの終わりを迎えられて、ホッとすると同時に、寂しくも思います。だってもう、可愛かった。可愛かったのだもの。ここからは、完全にネタバレてんこ盛りで、感想を書かせていただきます。どうぞご容赦下さい。

 

物語全体について

ものすごくざっくり言うと、比較的雑な作りのサスペンスミステリです。各個人の行動動機、密室や食べ物の毒物などの設定が甘く、展開のダイナミズムにも欠ける感じがしました。小道具の新聞紙に書いてある設定(高嶺の契約破棄は、取引先の競合企業潰し?みたいな内容。一応全員分ある)が、口頭で説明されず、小道具も見えないので、キャラクターの悪意/殺意の背景が見えづらかったです。しかし、シンプルな構成と表現を、実際の人間が血肉と熱量を持って演じることで、キャラクターの心理がその場に現れていて、とても引き込まれました。そこに人間が在るということは、説明されるまでもなく、これまで生きてきた過去が在るということですし。またそれぞれの役の解釈や演じ方、各々の衣装がとても好みで好みで好みだったので、私はとても大満足な作品でした。

 

鶴川泰助(及川いぞうさん)

元営業部の人事部のオジサン。高嶺社長に契約の予定を突如破棄された為に、営業部から人事部に移動、肩たたき役となる。「会社を辞めるか、営業でいらない社員のバイメイ(?)をするか」みたいなセリフがあったけれど、バイメイ?が、実際になんと言っているのか4回見てもわからなかった。(話の流れ的に意味はわかる)天野の口ぶりからすると、会社の指示でのリストラだけでなく、私怨でのリストラも行っていたようです。高嶺社長に対して恨みを抱いている。個人的に一番嫌いなおじさん。偉そうなことを言って、結局自分から動かないで済まそうとするタイプ。「犯人なら毒が入っていると知っているものを食べない」「つまりパンを食べなかった奴が犯人だ!」と言いだした時は、心の中で爆笑してしまいました。とりあえずまだパンに毒が入ってるって決まったわけじゃないし! 一個だけ入れてある可能性だってあるし! それを避けて食べる可能性もあるし! ツッコミはじめたらキリがない。でもオッサンってこういう風に、無根拠に堂々とアホなこというよなー!というリアリズムを感じてもいました。ラストの高嶺の提案に刃向かうところも同。いるいるこういうおじさん。めちゃくちゃ迷惑なの。その為、パンのくだりで犯人認定され、ウッカリナイフを刺された月島くんが、ラスト近くに復活して、鶴川を刺した時は、心からスッキリしました。

及川さんのお芝居はとてもリアルで、それもまた、いるいるこういうオッサン!感を増していました。言い回しが芝居がかってしまいがちな「希望が大きければ大きいほど、絶望も大きくなるんだ」系のセリフを、うまく噛み砕いて言おうとされていたのがなんとなく印象に残りました。

 

上村聡(才勝さん)

中学校教師。担任だったクラスの子が、いじめを苦にし、上村に相談していたが、上村が対応を誤り、結局生徒は死んだらしい。この話を天野にされている時の反応がとても良かったです。(あと、羽水の視線も心なしか冷ややかな気がしました) 月島をウッカリナイフで殺してしまった際の、小市民的な狂乱がとてもリアル…セリフが「若い命を散らしてしまった彼らに会って詫びたい」だったのが少し気になっています(複数なのは、生徒と月島を合わせているためなのか?) あとその狂乱時に、死んだ者たちに詫びたいに加えて、学校や家族に迷惑を掛けられないとも言っていたのが、世間体を気にする感じがあって良かったです。結局、隣室でどう自殺したのかが謎。才勝さんの雰囲気がとても好きです。世界観に現実味を与えてくれる感じがします。感情の高ぶりが声の震えにダイレクトに出てるのもなんだかすごい。

 

天野陽子(鳥羽まなみさん)

フリーライター。様々な事件を偏執的に取材し、公表する中で、犯人に自制と裁きを望む。一度行きすぎてしまい、犯人だった女性を自殺に追いやってしまったらしい。その過ちを受け入れたくないあまり、逆に自分の正義に固執している感じが、本作の中では一番サイコパスっぽくて嫌いになれないです。冒頭で死体になっていた(その後、回想場面で生きている頃を演じる)ので、SAWみたいに彼女がラスボスかな…と思ってしまいました。全体的にいらんことしい…だけど、彼女がさっさと、まさかの全員犯罪者!を公表し、飲食物に毒が入ってるかもしれないと言ってくれたおかげで、話が回り出すという部分もあります。ただ、なぜ都合よく、現場にいるほぼ全員(羽水については言及がない)の事件の詳細を知っていたのかが謎。筧が殺してくれた時、実はスッキリしました。鳥羽さんの、声を張り上げてアジテートするような芝居が、狂気を感じさせました。(罪を見て見ぬ振りをするのか、という流れで)そんなこと、私は出来ません!あたりが好きです。

 

月島翔(磯貝龍虎さん)

総合格闘家。期待されて出た大会で敗退、自暴自棄になり暴行事件を起こしたことがある。どうやら慰謝料か治療費を払っていないらしい。鶴川のオッサンのパン祭りの犠牲者。パンを食べない奴が犯人と言われ、素直にパンを食べたところ、毒が入ってないから食べたんだろう、つまりお前が犯人だ!と言われた。しかもその後一悶着あって、腹部にナイフが刺さって死亡。一度復活するも、鶴川を殺した後、筧に丹念に殺される。すごいかわいそう。月島くんは多分、単純に言われたことを信じただけでは…という気持ちになる。基本的にアホの子だなあという印象でした。格闘技も好きでやっていた感じがします。怪我をさせてしまった相手に、誠意を見せないのは悪いことかもしれないけど、慰謝料は仕事を干されてるから、お金がないんだろうな…と思ってしまったり。なんだか不憫なキャラクターでした。磯貝くんの芝居もよくあっていて、筧と凄みあっている(というか、ヤンキーのようにメンチを斬り合っている)ところがとても好きでした。体格がいいので設定もしっくりきました。

 

筧憲男(宮下雄也さん)

ヤクの運び屋。その他いろいろ。中学の頃から悪で、羽水をいじめたりしていたようだ。全体的に直情傾向にあり、暴力的。あまり深く考えず、絨毯爆撃していく。犯人が見つかるまで「殴る」「死ぬまで殴る」「他の奴を殴る」とたたみ込むのがいいクズ感あってよかったです。計2名殺害(天野&月島) 月島に対して「コーフンしすぎてスキありすぎ!」と笑うのが好きです。あと高嶺にこなをかけるものの、小心者であることを見透かされ、腹を立てて殺してしまう所もいい。その辺りのやりとりがなかなかにエロいので、外岡さんのファンさん大丈夫?ごめん?と、部外者ながら心配になりました。狂気的と言うよりは、小心者で虚勢をはり、自分が強いと信じざるを得ない、可愛さと悲しさを、強く感じました。キレ方が割とチンピラっぽくて可愛い。笑い声がヒャッハッハ!っと軽妙で良い感じです。その後、羽水に殺されるのも良かったなぁ…完全に見下していた相手に襲われて、とても驚いていたのか、大きく抵抗せずに死んでいくのが良かった。目を見開いて相手を見据える芝居がとても良かったです…恐ろしかった…早口でまくしたててるけれど、聞き取りやすい声も良かったです。

 

高嶺麗奈(外岡えりかさん)

外食産業の高嶺グループ社長。強引なやり方で、取引先や関連企業を犠牲にしながらのし上がってきたらしい。天野の「ご苦労されたでしょう」への「まぁ…それなりに?」という、なんとなく満更でもない感じの返事が可愛かったです。(ただしこの後、天野は「取引先が」と付け足す) 常に気丈かつ傲慢に振舞っていて、周りと衝突しまくりますが、1人になったときに、ほんの少しのぞかせた弱さが愛らしかったです。鶴川には特に強く恨まれていますが、個人的に鶴川が好きではないので、まぁ…そうね、という感じでした。最後、筧に押し倒されるものの、彼の弱さと虚勢を指摘し、マウントポジションへ…と思いきや、逆上した筧に首を絞めて殺されました。外岡さんは、どの程度お芝居をされているのかわからないのですが、大変なキャラクターを、強さは持ちつつ愛らしさは損なわないお芝居に、とても好感を持ちました。どうでもいい話なのですが、黒のタイトスカートの下に、黒いスパッツを履いてらしたので、倒れて足が開いてしまったのを見た時、古い3Dキャラのゲームのスカートの中(スカートの裾に影テクスチャが平らに貼ってあり、そこから足が伸びている)みたいだなと思ってしまいました。

 

有沢貴志(平野良さん)

第一課の刑事。無差別監禁連続殺人事件*1を、初めの頃から担当している。逃亡中の窃盗犯を射殺してしまったことがある。発砲許可の有無については、ややあやふやであるものの、公的には有ったということになっている模様。正義感と希望に溢れ、密室に閉じ込められた状況においても、皆を鼓舞し、諦めずにいようと声をかけていました。しかし実際には、彼が犯人だったらしく? 最後のシーンで、パンを齧り、唇を引き上げる姿は、ゾッとするものがありました。途中の、死を悼む姿は、芝居の芝居なのか、それとも芝居なのか、あるいは本心なのかわかりません。ただ彼自身に関しては、「なぜ殺すのか?」という問いに関する答えがないまま、物語が終わっています。実際、彼は殺してはいない(教唆はするものの手は下さない)ので、その問いに答えることもないのかもしれません。しかし全体的な行動動機や細かい部分(何故人を集め、密室に閉じ込めたのか? 希望方向に気持ちを盛り上げたのは、混乱を招くためか、実際にそう思って欲しかったのか? 殺しあいについてどう考えている? というか、共犯がいないと実行できない状況だけど、実際にいたのか?)が最後まで不明でした。しかし平野さんはスラックスが似合う。ベストも似合う。一郎ちゃんの堤さんも素晴らしかったけど、今回のお姿も素晴らしかった。月島を取り押さえているときのポーズがセクシーでした。

 

羽水猛(村井良大さん)

フリーター。かわいい。最高に可愛い。中学生の頃、筧に唆されて、いじめから逃れるために人を殺害。その人が、自分を助けようとしていてくれた先輩であると知り、半発狂。その後、遠方の高校へと進学、平和に暮らしているつもりが、どうにも、生きている実感がなく、人に馴染めず。おかしいと指摘されたり、違和感が増すにつれて、殺意の衝動にかられ、人を殺害。そのまま、冷えていく死体に触れることで、自分の温度と生命を実感できるシリアルキラーになってしまった。

監禁の犯人はこの中にいる、と断定するのが、根拠もないしなんだろうと思っていたのですが、一度見て二度目を見ると、単純に自分の願望を口にしていただけらしいということがわかり、なんだかいじらしく可愛らしく感じられました。終盤にて、自分の人生を壊した張本人である筧を本編にて殺害。「コーフンしすぎてスキありすぎですよ、先輩」と、筧のセリフをもじって言うのが可愛すぎました。あと死んだ身体を脚で二度つつくのも。痰を吐き掛ける芝居も、初日にはあった気がしますが、その後どこかのタイミングで消えたようです。過去回想内で、助けようとしてくれた先輩を殺してしまうシーンはマイムなのですが、年上の男性の生死をかけた抵抗と、羽水自身の苦悩を感じさせて、本当に素晴らしかった…。その後、筧が「よくやった」と囁きながら、羽水の頭を撫でるのにときめきで崩れ落ちました。有沢「なぜ殺すのか?」、羽水「それが生きてる証明(あかし)だから」のやりとりもいい。筧の死体に触れて、その冷たさを感じている時の、安堵したような、悲しいような表情が本当に好きで…。その後、有沢に否定され、これまで周りの人間にも否定されたことを思い出しながら、両手を袖の中に隠してしまう仕草も、愛らしくも切なかったです。萌え袖、裾の長さは勿論ですが、それよりなにより、フードをかぶった時のシルエットに萌えを叫びたい。可愛い。可愛い。

 

キャラ萌えから見る殺意の衝動感想は以上です。

とりあえず言いたいのは、萌える作品をどうもありがとうございました!本当に楽しかったです!!!!ということです。

キャストさん、スタッフさん、お疲れ様でした。本当に、ありがとうございました。

*1:一応、すでにあの世界の中で、この監禁殺人が、犯罪を犯した、あるいは加担した者だけが標的になると判明しているので、無差別ではないのではないのでは? と思いました。あとものすごく言いづらそう。むさべつかんきんれんぞくさつじんじけん