Tida-Tiger

好きなものだけ好きなだけ。

チャッピー

家族に誘われて行ってきました。

初め「イヤだ! 怖いのだから行かない!!」と抵抗していたのはナイショ…(タイトルをチャッキーと聞き間違えた)

ネタバレに配慮するのがとても苦手なので、ガンガンネタバレしながら書きます。注意。

 

南アフリカの犯罪多発都市ヨハネスブルグ。警察は抑止力として、テトラヴァール社の半自律型AIを搭載した人型攻撃ロボット「スカウト」の使用を開始。スカウト達は絶大な効果を発揮し、多くのギャング達を壊滅させた。そんな中、スカウトの開発者ディオンは、完全に自律し、自ら学習するAIを完成。AIのテストの為、全スカウトのプログラム管理用USBと、内部構造とバッテリー破損のため廃棄予定となっていたスカウト22号のボディを、社長の許可無く持ち出した。帰路を急ぐディオンを強襲するギャング達。彼らはスカウトを自分達の仲間にしようと企み、ディオンに修理と起動を命じる。ディオンは新AIを破損スカウトにプログラム。そして、チャッピーは生まれた……ギャングのアジトで、彼らを父母として、たった5日の命を育んでいく。

リアル犯罪都市×人工知能系SFという、刺さるほどリアルで切ないSFです。同じ監督さんなので分かると思いますが、第9地区が好きでエビちゃん可愛い!って人だったら、滅茶苦茶楽しめます。でもエビちゃん同様、苦しみます。チャッピー可愛いよチャッピー。チャッピー悲しいよチャッピー。

ギャング達がチャッピーを育てていくのですが、それが可愛いのと切ないのとで…。チャッピーは、普通の子どもと同じです。そこで生まれて、育てられたら、そこで生きていくようにしかなれない。チャッピーは、創造主(メイカー)たるディオンに、犯罪や暴力をしてはいけないと、善意のような物を植え付けられます。しかし、ギャングのニンジャは「ナイフで刺すのは、人を眠らせるだけだ」「お金を稼げば、チャッピーはもっと生きられる。だから強奪は悪いことじゃない」と言って、チャッピーを現金輸送車強盗に誘う。ナイフで刺したら、人は苦しんで、いずれは死にます。お金を稼いでも、チャッピーの自我・意識を、プログラムとして別のボディに移せる訳ではない。全部嘘だけど、この世界で生きて行くには、そうするしかない。それでいて、罪が許されるわけでもなければ、善意に背いた痛みや、父に裏切られた苦しさが、軽くなるわけでもない。

個人的に、予告動画やは9割嘘っぱちだと感じました。AIを持つロボットvs人類みたいになっていますが、そういう話じゃないです。そもそも、人類について考えている人なんて一人もいないです。あいつ等全員自分のことで精一杯です。あと「チャッピーは特別」と言うのはヨーランディ(ママ役)ですが、ニュアンス的には、普通のお母さんが自分の子どもに囁く言葉でした。ヴェルタースオリジナルのCM*1と同じ。AIの危険性!特別!と言うよりは、普通に人間のように学習して成長していくAIがあったなら、人間同様に、育ての親の素質によって、知能の方向性が決まるだろうし、結果、そのボディの性能の扱い方も変わってくる…という風に感じました。スピルバーグA.I.と並べる感想も多いですが、まず初めに、AIのベースプログラムの方向性や、ロボット本体に求められた役割が違うので、違和感があります。

登場人物は、誰一人善人ではありません。ディオンは自分の制作物命ですし、ニンジャ・ヨーランディ達ギャングは、人としての温かみを持ちますが、根本的にギャングです。日本の予告だと、人間の為にチャッピーを倒そうとしているように見えるヒュー・ジャックマンですが、実際は軍人上がりの研究者で、自分の作った脳波操縦式ガードロボット(大きい・名前はムース)を、警察や政府に売り込みたいだけです。チャッピーですら、ギャングとして成長していく中で、自分が生きるために人を傷つけたり、大きく間違い続けます。

途中、現実を教えるんだと、ニンジャ達がチャッピーを、ギャング見習いの坊や達の所に置いていくのですが、そこからチャッピーが家に帰り着くまでの流れが一番辛かったです…警察の装備であるスカウトと同じ形をしているが故に、坊や達には石や火炎瓶を投げつけられ…ヒュー・ジャックマンには捕縛され、腕を切り落とされた上に、頭を開けてUSBを抜き取られ…。個人的に、暴行(特に痛そうなの)=自律型ロボット破壊>殺害>>>遺体損壊の順に、精神的にくるので辛かったです。どっちもグロなので、人が爆発したり死んだりするのはNGで、ロボットの腕を切り落とすのはOKっていうの、どうにかなりませんか、映倫さん。ロボットにとっては、スナッフムービーも同然ですよ。冗談ですが。

チャッピーの日本版映画については、映倫の関係で一部映像がカットされたという話がありました。

私が見た分も、勿論カット版です。クリエーターの意思に反して変更を加えられるのは問題ですが、何となくここがカットされたかな?という若干の違和感はあるものの、話の流れが阻害されることはありませんでした。金曜ロードショーほどではない感じですので、そこが引っかかっていた方は、見に行っても大丈夫では、と思います。でも折角ですので、DVDではちゃんとした完全版(ワールドワイド版)を出していただきたいです。

 

エンディングに流れる曲。

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結構好きです。あとラストにニンジャが履いてる、「テンション」とカタカナで書かれたニッカボッカと、ヨーランディのチャッピーTシャツが可愛い…。

*1:今では私がおじいさん。孫にあげるのはもちろんヴェルタースオリジナル。なぜなら彼もまた特別な存在だからです